欧州委が対米関係再構築の方針発表、コロナ・環境など4分野で連携強化

欧州委員会は2日、米国との新たな協力関係の構築に向けた基本方針を発表した。米大統領選挙でバイデン前副大統領の当選が確実になったことを受け、新型コロナウイルス感染症の対応や気候変動を中心とする環境問題など、4つの分野で米国との連携強化を提案している。トランプ政権で悪化した対米関係を改善するのが狙い。2021年前半のEU・米首脳会議でバイデン氏と直接協議したい考えで、今月10日、11日のEU首脳会議で加盟国の承認を目指す。

米国第一主義のトランプ政権下では通商分野などでEU・米間に亀裂が生じた。欧州委は声明で、過去数年間は厳しい試練にさらされたものの、バイデン氏の勝利は対米関係を再構築する「一世代に一度の機会」と強調。フォンデアライエン欧州委員長は「強固な協力関係を築くことができれば、EUと米国はともに強くなれる」と述べ、関係改善に期待感を示した。

欧州委が協力を提案する4分野のうち、新型コロナウイルス対策ではワクチンの開発や供給、治療法や検査方法の確立などを共同で進めるほか、世界保健機関(WHO)の改革にも取り組む必要があるとの認識を示した。環境問題ではバイデン氏がパリ協定への復帰を明言していることを念頭に、米国に対してEUと同様に2050年までの気候中立を目指すよう呼びかけると同時に、再生可能エネルギーなどの技術開発やサステナブルファイナンス(持続可能な金融)などの分野でも双方の協力が不可欠だと訴えた。

通商分野では米航空機大手ボーイングと欧州エアバスへの補助金をめぐる紛争などの早期解決を訴えたほか、世界貿易機関(WTO)改革や、第5世代(5G)移動通信システムなど重要インフラの安全保障をはじめとするデジタル政策での協力を呼びかけた。さらに民主主義や人権といった分野では多国間主義を推進し、地域の安定と繁栄、紛争解決に貢献すべきだと訴えた。

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