英政府は19日、首都ロンドンを含むイングランド南東部の大半の地域で新型コロナウイルス感染が急拡大しているため、20日から外出・営業規制を強化すると発表した。感染力が高い変異種のウイルスによる感染が広がっていることを警戒したもので、事実上のロックダウン(都市封鎖)再開となる。この事態を受けて、EUでは英国からの旅客機の乗り入れを禁止するなど、入国規制を強化する動きが広がっている。
イングランドでは11月5日から実施されてきた2度目のロックダウンが12月2日に解除され、各地域の感染リスクの高さに応じて営業規制などを行う制度が再開された。ロンドンは「レベル1(感染リスクが中程度)」、「レベル2(高い)」「レベル3(非常に高い)」の3分類のうち真ん中の「レベル2」に指定されていたが、感染が再び拡大しているため、近郊地域とともに16日から「レベル3」に引き上げられたばかりだった。
英政府は「レベル3」より警戒度が上の「レベル4」を新たに分類に加え、これらの地域を指定した。対象地域では不要不急の外出と、生活必需品を扱う店以外の営業が禁止される。警戒度が「レベル4」より下の地域との往来も原則禁止となる。新規制は少なくとも12月30日まで実施される。
ハンコック保健相は14日にロンドンなどを「レベル3」に引き上げると発表した際、イングランド南東部を中心に1,000人以上が変異種の新型コロナウイルスに感染したことを明らかにし、規制強化への理解を求めていた。
ジョンソン首相がロックダウン再実施発表の記者会見で明らかにしたところによると、変異種は感染力が従来のウイルスより70%以上も強いとみられている。政府筋によると、ロンドンでは変異種に感染した人が新規感染者の60%を占める。首相は従来のウイルスに感染した場合と比べて重篤化することや、ワクチンが効かないことを示す証拠はないとしながらも、強い警戒を呼びかけた。
政府はクリスマス期の23~27日については最大3世帯まで集まることを認めていたが、「レベル4」の地域では同特例措置を認めないことを決めた。イングランドの他の地域でも、クリスマス当日(25日)に限って認める。
英国内ではイングランド以外の地域も規制が強化される。スコットランド政府は19日、国内の他の地域への移動を26日から禁止すると発表。クリスマス期の集まりに関する特例措置もイングランドと同じく25日に限って適用することを決めた。ウェールズ政府も同日、20日からロックダウンを実施すると発表した。
EU各国、英国からの入国規制強化
EUでは英国で新型コロナウイルスの変異種による感染が広がっていることを受けて、英同国を対象とする入国規制強化に踏み切る国が相次いでいる。20日にはフランス、ドイツなどが英国からの旅客機の乗り入れを禁止すると発表した。
これまでに同規制を発表したのはフランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、オーストリア、アイルランドなど。フランスは21日午前0時から48時間にわたって英国発の旅客機のほか貨物便の乗り入れを禁止する。陸路、海路での輸送も止める。ドイツは旅客機に限り、乗り入れを禁止した。期間は明らかにしていない。
このほかスウェーデン、ルーマニア、リトアニア、ラトビア、エストニア、ブルガリア、チェコも同様の措置を講じる意向を表明している。
世界保健機関(WHO)によると、英国と同じ変異種のウイルスが、これまでにデンマーク、オランダ、オーストラリアで見つかっている。さらに、イタリア政府は20日、数日前に英国からローマ空港への航空便で帰国した人が変異種に感染していることが確認されたと発表した。
EUは変異種のウイルスによる感染が域内で広がることを強く警戒しており、議長国ドイツは21日に全加盟国が緊急会合を開き、対応を検討することを決めた。