米国は12日、EUによる欧州航空機大手エアバスへの補助金が不当だとしてEU製品に賦課している報復関税の対象を拡大し、新たにフランスとドイツから輸入する航空機部品やワインを対象品目に追加した。航空機補助金を巡っては、世界貿易機関(WTO)がエアバスと米ボーイングに対する補助金を共に違法と認定した後も米欧の対立が続いており、EUはバイデン次期米政権との協議で事態打開を目指すことになる。
米通商代表部(USTR)は今月5日、EUが2020年11月に発動した最大40億ドル(約4,100億円)の米国製品に対する報復関税について、「計算方法に誤りがあり、公平性に欠ける」などと指摘。12日付で仏独から輸入する一部の航空機部品に15%、ワインに25%の追加関税を発動すると発表していた。
エアバスは航空機部品を報復関税の対象品目に加えた米側の決定は「非生産的」であり、「A320」と「A220」の組み立てを行っているアラバマ州モービル工場の従業員に悪影響が及ぶ可能性があると警告した。航空機には既に15%の追加関税が賦課されているが、新たに航空機部品の一部も対象となったことで関税引き上げによる負担分を価格転嫁せざるを得ず、紛争が長引けばエアバスは米市場で競争力を失うことになる。
EUと米国はエアバスとボーイングに対する補助金の違法性を巡り、2004年からWTOを舞台に争ってきた。WTO上級委員会は18年5月、EUによるエアバスへの補助金は不当との最終判断を下したのに続き、19年3月には米国によるボーイングへの補助金も不当と認定。米国は年間最大75億ドル相当のEU製品、EUは年間最大40億ドル相当の米国製品に報復関税を課すことを承認した。これを受けて米国は19年10月、EUから輸入する航空機、ワイン、チーズなどに追加関税を課す報復措置を発動。EUも昨年11月から航空機やトラクター、ワインなどの米国製品に関税を上乗せしている。