マスターカード、英・EU間購入の手数料引き上げ

米クレジットカード大手マスターカードは1月25日、英国のカード保有者がEUを含む欧州経済領域(EEA)からオンラインで商品やサービスを購入する際、カード使用にかかる手数料を現在の5倍以上に引き上げる方針を明らかにした。EUはクレジットカードやデビットカードによる決済時の手数料に上限を設けているが、英国がEUから完全離脱したことで、同国とEEA間の決済は規制の範囲外となるため。オンライン販売に依存する小売業者などは手数料の引き上げが価格上昇につながるとして反発を強めている。

消費者がクレジットカードやデビットカードを使用する際、加盟小売業者の銀行(加盟店銀行)はカード保有者の銀行(カード発行銀行)に対し、決済手数料(インターチェンジ・フィー)を支払う。加盟店銀行が支払う決済手数料は加盟小売業者に転嫁され、最終的に小売価格に反映される。EUでは手数料水準が国によって大きく異なり、リテール決済サービス分野における単一市場の実現を妨げる要因になっているとして、2015年に域内でのカード決済にかかる手数料に上限を設ける規制が導入された。クレジットカード使用時の手数料は利用額の3%、デビットカード決済の手数料は最大0.2%が上限となっている。

マスターカードによると、10月15日以降、英国でEEA内のマスターカード加盟店からオンラインで商品やサービスを購入する際の決済手数料は、クレジットカードが1.5%、デビットカードは1.15%にそれぞれ引き上げられる。

マスターカードはEU域外で発行されたカードを域内で使用する際に発生する多国間決済手数料の引き下げを求めるEU側の要求に応じ、19年にライバルの米ビザとともに従来の手数料を平均40%引き下げた。現在はクレジットカード決済の手数料が利用額の1.5%、デビットカードが1.15%となっている。マスターカードは英国での手数料引き上げについて、地域間決済手数料に関する欧州委員会との取り決めに沿った水準だと説明している。

英国の新興小売業者などが加盟する「コアリション・フォー・デジタルエコノミー」の代表は、「英国のEU離脱を手数料引き上げの理由にしているが、多くの小規模ビジネスが生き残りをかけてオンラインに軸足を移したタイミングでの変更は大きな痛手だ」とマスターカードの対応を非難。金融機関と企業の公正な取引を求める超党派グループのケビン・ホリンレーク議員は「手数料の大幅な引き上げは憂慮すべき事態だ。規制当局は緊急を要する案件として速やかに介入し、金融機関がEU離脱を口実に消費者に追加的な負担を強いることがないようにしてほしい」と訴えた。

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