欧州委員会は11日に発表した冬季経済予測で、ユーロ圏の2021年の域内総生産(GDP)実質伸び率を3.8%とし、前回(11月)の4.2%から0.4ポイント下方修正した。マイナス6.8%だった19年から持ち直すものの、新型コロナウイルスの感染再拡大を受けて各国が昨秋に再開したロックダウン(都市封鎖)など外出・営業制限措置が続いていることから、当面は低成長にとどまるとみている。ただ、ワクチン接種の進展に伴い、夏には景気回復が加速すると予測。22年については3.0%から3.8%に上方修正した。(表参照)
EU27カ国ベースの予想成長率は21年が3.7%、22年が3.9%。21年は0.4ポイントの下方修正、22年は0.9ポイントの上方修正となった。主要国の21年の予想伸び率はドイツが3.2%、フランスが5.5%、イタリアが3.4%、スペインが5.6%となっている。
今回の予測は外出・営業制限が21年1~3月期までは続くが、4~6月期の末までに緩和が始まり、高齢者など新型コロナに感染すると重篤化する可能性が高い人の大半がワクチンを接種すると見込まれる下期には、緩和が一層進むという前提で算出された。
欧州委は実際の景気動向は新型コロナ感染状況やワクチン接種の進展度に大きく左右されるとした上で、ユーロ圏では21年1~3月期が前期に続いてマイナス成長になるものの、春には回復し、夏から回復が加速すると予測。ジェンティローニ委員(経済担当)は「トンネルの出口が見えてきた」と述べ、景気がコロナ禍前の水準に回復する時期が前回予測の23年以降より早い21年半ばになるとの見通しを示した。
欧州委は前回までEUと英国の自由貿易協定(FTA)が20年中に締結されず、21年から双方の貿易で関税が復活するというシナリオを想定していた。ジェンティローニ委員はFTAが暫定発効したものの、英国のEU離脱はEU、英国のGDPを22年末までにそれぞれ約0.5ポイント、2.2%押し下げるとの予測を示した。
ユーロ圏のインフレ率に関しては、21年が1.4%、22年が1.3%で、20年の0.3%を大きく上回るものの、欧州中央銀行(ECB)の目標値である2%には程遠い。欧州委は景気対策の面も含めて、現在の金融緩和措置を当面は継続する必要があると指摘している。