エストニアが世界保健機関(WHO)と共同で、国際ワクチン接種証明証のデジタル化試験プロジェクトに取り組んでいる。両者は昨年10月の合意に基づき、黄熱病ワクチン接種証明システムのデジタル版という形で「スマートイエローカード」の可能性を共同検証する。現在は医療機関が発行した証明証であることを確認するための土台となる世界基準の策定に注力している。
エストニア政府のテクノロジー顧問であり、WHOのデジタル医療問題の顧問でもあるカエヴァッツ氏によると、国際的に通用する電子証明証を数カ月以内に作ることは難しく、紙の証明証とデジタルデータを組み合わせた形式となるもようだ。新型コロナのワクチン接種証明に関しては、デンマークやスウェーデンが電子証明システムを導入する計画を明らかにしている。
エストニアは電子行政の先進国で、2008年に国民の医療情報の電子記録システム「eヘルスレコード」を導入し、請求書、医療データ、処方箋をほぼ完全にデジタル化している。WHOとの合意は広範な電子医療プロジェクトを網羅するもので、医療データの相互利用のための国際フレームワーク、国内電子処方箋、医薬品分配システム、欧州の国家医療システム電子化のロードマップなどを重点課題としている。
一方、エストニアのサイバーセキュリティ大手ガードタイムは、ブロックチェーンを使った電子健康記録の国際認証システムの開発に取り組んでいる。電子ワクチン証明は繊細な個人情報に関わるため、データ乱用や人権侵害を懸念する声も多いが、同社はブロックチェーンを使うことによって、個人情報を確実に保護できるという。