欧州委員会は18日、EUが優先事項と位置づける環境政策やデジタル移行の推進につながる新たな通商戦略を発表した。「開放性」と「持続可能性」、「EUの利益の積極的擁護」を戦略の柱に据え、多国間主義に基づく貿易体制を支持する一方、より積極的な関与でEUの権利と価値を守る姿勢を明確にした。世界貿易機関(WTO)を改革して現実に即した持続可能な貿易ルールを実現することも盛り込んだ。
「開かれた、持続可能で、積極的に主張する通商政策」と名づけられた新戦略は、「開かれた戦略的自律性」の概念を反映しており、グリーン化とデジタル化を通じたEU経済の復興に役立つ貿易の実現を目指す。
欧州委のドムブロフスキス上級副委員長(通商担当)は声明で「新型コロナウイルス収束後の経済成長と雇用創出を支援するため、開放的で公正なルールに基づく貿易体制を確立する必要がある。新たな通商政策はEU経済のグリーン化とデジタル化を後押しし、WTO の改革に向けた世界的な取り組みをリードしなければならない」と訴えた。
新戦略は今後の通商政策で重視する分野として、WTO改革、グリーン化と持続可能なバリューチェーンの推進、デジタル移行の推進などを挙げている。WTO改革に関しては、WTOの紛争処理制度の最終審に当たる上級委員会の欠員による機能停止を解消し、上級委員会の承認なしに対抗措置を取ることができる仕組みを導入する。
一方、貿易を通じて地球環境や労働条件の改善を図るため、WTOで環境や持続可能性に関するイニシアチブを推進する。今後EUが結ぶ貿易協定には温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」の順守を盛り込むほか、第三国での強制労働によって生産された製品をEU市場から排除する仕組みを導入する。
さらにデジタル貿易に関するWTOのルール作りや、第三国へのデータ移転に関する規制の調和などで引き続きEUが主導権を握る必要性を説いている。