英製薬大手アストラゼネカは2月23日、英オックスフォード大学と共同開発した新型コロナウイルス用ワクチンのEUへの供給量について、4~6月期も予定を下回る見通しだと発表した。EU域内での生産が遅れているためで、予定の半分を下回る量しか供給できない状況だ。
同社とEUの契約では、4~6月期にはEU域内の拠点で製造したワクチン1億8,000万回分を供給することになっている。しかし、9,000万回分を下回る見込みで、その旨をEUに通知した。不足分を埋めるため、域内での増産に努め、他の拠点で製造するワクチンをEUに回すことを検討しているという。欧州委の報道官は、機密事項としてコメントを避けている。
アストラゼネカのワクチンはファイザー、モデルナのワクチンと異なり、一般的な冷蔵庫でも保管が可能という利点がある。EUは1月末に承認し、2月に接種を開始した。世界保健機関(WHO)も効果、安全性を確認し、15日に使用許可を出した。
EUが2020年8月に結んだ契約では、最大4億回分のワクチンが供給される。しかし、同社は1月、3月末までの供給量を当初予定されていた8,000万回分から3,100万回分に減らすと発表。EUの猛反発を受けて900万回分増やし、計4,000万回分を供給することを数日後に約束したが、それでも予定の半分にとどまる。
EUではすでに承認していたファイザー、モデルナのワクチンも不足し、接種が遅れていることから、アストラゼネカの通告を機に、域内で製造された新型コロナワクチンの域外への輸出について、許可制導入に踏み切った経緯がある。
アストラゼネカによる4~6月の供給量が実際に予定を大きく割り込むと、同社への不信感が一層強まり、さらに関係がこじれるのが確実だ。