欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2021/3/8

EU情報

EU共通のワクチン接種証明書発行、欧州委が月内に法案提出

この記事の要約

欧州委員会のフォンデアライエン委員長は1日、新型コロナウイルスワクチンの接種を受けた人にEU共通のデジタル証明書を発行する制度の導入に向けた法案を3月中に提出する意向を表明した。夏の観光シーズンに合わせて域内の人の自由な […]

欧州委員会のフォンデアライエン委員長は1日、新型コロナウイルスワクチンの接種を受けた人にEU共通のデジタル証明書を発行する制度の導入に向けた法案を3月中に提出する意向を表明した。夏の観光シーズンに合わせて域内の人の自由な移動を取り戻す狙いがあるが、導入に慎重な加盟国が多く、調整の難航が予想される。

「ワクチンパスポート」と称される同制度は、ワクチン接種者に証明書を発行し、域内を自由に移動できるようにするというもの。観光業が経済の大きな柱となっているギリシャ、スペインなどが提唱している。

フォンデアライエン委員長はツイッターへの投稿で、証明書を「デジタル・グリーンパス」と命名。関連法案を月内に提示する方針を示した。同証明書ではワクチン接種の有無だけでなく、未接種者のPCR検査の結果、新型コロナ感染歴がある人の回復状況に関する情報もデジタルデータ化され、国境を超える際にチェックできるようにする。域内の旅行のほか、EU外の諸国とも連携して域外への旅行の際にも証明書として通用することを想定している。

欧州委のスキナス副委員長が記者会見で明らかにしたところによると、法案は3月17日に欧州議会に提出される予定。25日のEU首脳会議での承認を目指す。

ワクチンパスポートをめぐっては、他の加盟国に観光目的で渡航する際も一定期間の隔離などを求められることなく入国できるようにすることで、コロナ禍で大打撃を受けている観光、ホテル、航空業界の復興を支援する狙いがある。

ただ、フランス、ドイツを含む多くの加盟国が、ワクチン接種が遅れている現状では一部の人にしか発行できず、差別につながるほか、ワクチンを接種した人も感染力を持つ可能性が現段階では否定できないとして難色を示している。2月25日のEU首脳会議では、EU共通証明書を発行する制度の導入では合意したものの、運用方法など詳細は先送りとなっていた。このため、欧州委が法案を提出しても調整に時間がかかりそうだ。