欧州委員会は4月30日、米アップルが音楽ストリーミング市場で公正な競争をゆがめているとの予備的見解をまとめ、同社に異議告知書を送付したと発表した。モバイル端末向けアプリ販売サイト「アップストア」の支配的地位を乱用し、EU競争法に違反したとの疑いを強めている。正式に違反と認定されると巨額の制裁金を科される可能性があるが、アップルは違法性を否定している。
欧州委はスウェーデンの音楽配信大手スポティファイの申し立てを受け、2020年6月からアップルに対する調査を進めていた。スポティファイはアップルがアプリ流通での市場支配力を乱用し、アップストアで自社の定額制音楽配信サービス「アップルミュージック」と競合するサービスに不利な条件を課していると主張。特にサブスクリプション型サービスを提供する同社のようなコンテンツプロバイダがアプリ内課金を利用する際、アップルが手数料として売り上げの30%を徴収するシステムを問題視していた。
欧州委はこれまでの調査から、スポティファイのような音楽配信サービス業者がアップストアを介してアプリを配信する際、アップル独自の課金システムの利用が義務付けられており、ほとんどの業者は価格を引き上げ、アップルに支払う手数料などの負担をユーザーに転嫁していると指摘。また、アプリ開発者が他の購入選択肢をユーザーに周知する手段をアップルが制限している点にも懸念を示した。
欧州委のベステアー上級副委員長(競争政策担当)は声明で、アップルは競合する音楽配信サービス業者に不利なルールを課すことで「ユーザーの選択肢を狭め、公正な競争をゆがめている」と批判。「アップストアへのアクセス条件がアプリ開発者にとって成功の鍵を握っており、アップルの市場支配力をチェックする必要がある」と述べた。
アップルは12週間以内に欧州委に回答する必要がある。同社は声明で「スポティファイはアップストアの恩恵を受けつつ、iOSアプリ上で代替サービスを宣伝できるようにしろと要求している。そのようなことは世界のどのアプリストアも認めていない。欧州委がスポティファイの主張を代弁するのは、公正な競争と正反対の行為だ」と強調した。