中国との投資協定、批准手続き停止=欧州委副委員長

欧州委員会のドムブロフスキス上級副委員長(通商担当)は4日、EUと中国が昨年末に基本合意した「包括的投資協定」について、発効に向けた批准手続きを停止したことを明らかにした。新疆ウイグル自治区での人権問題を巡ってEUと中国が互いに制裁を発動し、双方の関係が悪化していることが背景。EUとして引き続き協定締結を目指す姿勢を示しているが、EU側の制裁対象には中国当局による人権侵害を批判してきた欧州議会議員などが含まれており、批准・発効の先行きは不透明だ。

EUは3月下旬、ウイグル族に対する重大な人権侵害が続いているとして、中国政府当局者らへの制裁を発動。中国側はこれを受け、直ちにEU当局者らに報復制裁を科した。ドムブロフスキス氏はAFP通信とのインタビューで、EUと中国が相互に制裁を発動している現状では「投資協定の批准に向けた環境が整っていないことは明らかだ」と発言。協定が発効するとEU企業にとっては中国市場へのアクセスが改善され、EUと中国の「経済関係の不均衡が是正される」と指摘したうえで、批准できるかどうかは「より広範なEUと中国の関係がどのように進展するかにかかっている」と強調した。

2014年にスタートした投資協定を巡る協議は難航が続いていたが、昨年12月末にようやく妥結した。中国経済を取り込んで新型コロナウイルスで打撃を受けた経済を再生させたいEUと、米国の政権交代を前にEUとの関係を強化したい中国の思惑が一致した格好で、中国側は産業補助金の透明性向上や、参入企業に対する技術移転の強要禁止などを受け入れた。ただ、欧州議会は以前から、ウイグル族の強制労働や香港の民主派弾圧を問題視しており、中国がEUへの報復制裁を発動した直後から、投資協定の承認に向けた審議を中断していた。

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