欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2021/5/17

EU情報

21年のユーロ圏成長率、4.3%に上方修正=欧州委

この記事の要約

欧州委員会は12日に発表した春季経済予測で、ユーロ圏の2021年の域内総生産(GDP)実質伸び率を4.3%とし、前回(2月)の3.8%から0.5ポイント上方修正した。新型コロナウイルスワクチンの接種が進み、ロックダウン( […]

欧州委員会は12日に発表した春季経済予測で、ユーロ圏の2021年の域内総生産(GDP)実質伸び率を4.3%とし、前回(2月)の3.8%から0.5ポイント上方修正した。新型コロナウイルスワクチンの接種が進み、ロックダウン(都市封鎖)など経済・社会活動の制限が緩和されることなどで景気が力強く回復すると見込んでいる。(表参照)

22年の予想成長率も3.8%から4.4%に引き上げた。EU27カ国ベースでは21年が4.2%、22年が4.4%で、それぞれ前回の3.7%、3.9%から大幅に上方修正した。

ユーロ圏のGDPはコロナ禍の影響で20年に6.6%減と大きく落ち込み、21年1~3月期も前期比0.6%のマイナス成長となった。

しかし、欧州委は遅れていたワクチン接種が加速しており、経済・社会活動制限の緩和が進んでいることで個人消費が活発化し、輸出も世界経済の正常化に伴って増えると予測。新型コロナウイルスの感染拡大で大きな打撃を受けたEU経済の再生に向けた「復興基金」の資金配分が21年下期に開始されることも景気回復を後押しするとして、今年と来年の予想成長率を大きく引き上げた。

主要国の21年の予想成長率はドイツが3.4%、フランスが5.7%、イタリアが4.2%、スペインが5.9%。すべてのEU加盟国がプラス成長となる見通しだ。成長のペースにばらつきはあるものの、22年末までには全加盟国がコロナ禍前の水準に回復すると見込んでいる。ジェンティローニ委員(経済担当)は「景気回復はもはや幻ではない。進行中だ」と述べた。

欧州委は物価も原油価格の上昇などで持ち直し、20年に0.3%にとどまったユーロ圏のインフレ率が21年は1.7%に達すると予測している。ただ、ドイツで付加価値税(VAT)減税が12月に終了したことが大きく、この効果が反映されない22年は1.3%に縮小する見通しだ。

ユーロ圏の失業率については、各国の雇用支援策で急激な悪化を抑えているものの、雇用市場が完全に回復するまでには時間がかかるとして、21年は前年を上回る8.4%に上昇すると予測。22年は7.8%まで改善すると見込んでいるが、コロナ禍前を上回る水準だ。

ユーロ圏の21年の財政赤字はGDP比8%となる見込み。各国が新型コロナ危機に巨額の財政出動で対応していることから、前年を0.8ポイント上回る。欧州委は雇用、企業を守るため、赤字が拡大するのはやむを得ないとしている。ただ、22年には同3.8%まで縮小すると予想している。