EU当局、中国製ワクチンの審査開始

EUの欧州医薬品庁(EMA)は4日、中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)が開発した新型コロナウイルスワクチンの「逐次審査」を開始したと発表した。EUによる欧米以外のメーカーが開発した新型コロナワクチンの承認に向けた審査は、ロシア製の「スプートニクⅴ」に次ぐ2例目となる。

逐次審査は感染症の世界的流行など緊急時に際して必要なワクチンや治療薬の承認手続きを迅速化するため、試験データを順次審査する制度。通常は臨床試験(治験)の最終データがまとまってから承認が申請され、審査を開始するが、同制度では承認が正式に申請される前の段階で、最終的な試験結果を待たずに入手可能なデータから順次審査を進める。このため通常より短期間で審査を完了することができる。

EMAはシノバックによる承認申請に備え、逐次審査を開始。これまでの治験結果などに基づき、有効性と安全性を検証する。

これまでにEUは米ファイザー、モデルナ、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)、英アストラゼネカが開発したワクチンを承認した。シノバックのワクチンとスプートニクⅴについては、十分な治験を経ずに見切り発車したとして効果、安全性を疑問視し、EUの調達計画の対象外としてきた。両国による「ワクチン外交」を警戒していることも背景にある。

しかし、英医学誌ランセットが2月、スプートニクⅴの高い効果が確認されたという論文を発表したのをきかっけに、同ワクチンを利用する国が増え、EUでも加盟国が独自に調達する動きが出てきたことから、EMAは3月初めに逐次審査を開始していた。

これに続いてシノバック製ワクチンの逐次審査開始に踏み切ったのは、J&Jとアストラゼネカのワクチンに副反応として血栓が生じる事例が報告されたことを受けて加盟国の一部が接種を中止しているため、新たなワクチンを確保したいという事情があるもようだ。

シノバックのワクチンは中国のほかインドネシア、ブラジル、トルコなどで承認されている。

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