EUと米国は17日、鉄鋼とアルミニウムをめぐり相互に追加関税を課している問題の解決に向けた協議を開始すると発表した。EUは6月に予定していた対米報復関税の拡大を見送る。EU・米は同盟関係を修復して鉄鋼とアルミニウムの過剰生産の問題について対話を進め、貿易歪曲的な措置を取る中国などに対抗する。
米欧の通商摩擦はトランプ前政権が2018年、輸入品の増加で国内の鉄鋼・アルミ産業が弱体化すれば米国の安全保障が脅かされると主張し、輸入制限を発動したのが発端。「通商拡大法232条」に基づき、EUや日本を含む外国産の鉄鋼とアルミニウムにそれぞれ25%、10%の追加関税を課した。EUはこれに対し、鉄鋼・アルミニウム製品のほか、大型二輪車やウイスキーなどの米国産品に対する報復関税を発動。6月1日から一部品目の関税引き上げや対象品目の拡大を計画していた。
こうした中で欧州委員会のドムブロフスキス上級副委員長(通商政策担当)、米通商代表部(USTR)のタイ代表、レモンド米商務長官が会談し、交渉中は追加措置を控えることで合意した。EUと米国は共同声明で「中国など貿易を歪曲する政策を実施する国に責任を負わせる」と強調。米欧間では「21年末までに関税に代わる解決策で合意を目指す」と表明した。
中国をにらみ、EU・米がひとまず協調路線を打ち出したことで、米産業界からは今回の合意を歓迎する声が上がっている。EUが6月に予定していた対米報復関税の拡大で標的になっていた酒造業者が加盟する米国蒸留酒協会のクリス・スワンガー会長は、「EU市場からの撤退を余儀なくされる可能性もあった輸出業者にとって朗報」と評価。一方、米鉄鋼協会のケビン・デンプシー会長は、通商紛争の解決に向けた米欧間の合意を歓迎したうえで、「中国などによる過剰生産や補助金など市場を歪める措置に目を向けるべきだ」と指摘。バイデン政権に対し、世界的な過剰生産の問題が解決するまで輸入制限を継続するよう要請した。