EUは25日の首脳会議で、域内で2030年までに温室効果ガス排出量を1990年比で少なくとも55%削減する目標を達成するための対策について協議したが、各国の排出削減目標を設定する方法についての合意を見送った。EUは50年に排出を実質ゼロにするため、EU排出量取引制度(EU-ETS)の拡充などを検討しており、欧州委員会が7月に政策案をまとめる見通しだ。
EUは当初、30年までの削減目標を90年比40%減としていたが、50年までの気候中立を実現するため55%に引き上げた。欧州委は新目標を達成するため、新たにEU内と域外を結ぶ航空便や海運、自動車輸送などの運輸、建造物などをEU-ETSの対象に加える方向で検討を進めている。
国別の削減目標を設定する際、「加盟国の排出削減の分担に関する規則」に基づき、EU-ETSの対象から除外されている運輸、建築、農業、廃棄物などの分野でさまざまな調整が行われるため、先にETS拡充の具体的な内容を固める必要がある。このためロイター通信が入手した首脳会議の声明草案には、国別目標の設定方法についてETS改革の検討を踏まえたいくつかの要求が盛り込まれていたが、最終的にそれらは削除され、欧州委に対し気候変動に関する12項目の政策を速やかに策定するとともに、加盟国レベルでの環境、経済、社会への影響を詳細に検討するよう求める内容となった。