EUがアストラゼネカに巨額の補償要求、ワクチン供給遅延で

欧州委員会が英製薬大手アストラゼネカをEUと結んだコロナウイルスワクチン供給契約を順守してないとして提訴している問題で、EU側の代理人は26日、巨額の補償金支払いを命じるよう裁判所に求めた。勝訴すれば、補償は総額で数十億ユーロに上る見込みだ。

EUはアストラゼネカと2020年8月に事前購入契約を締結。20年12月から21年6月末までに3億回分を受け取ることになっていた。しかし、供給が遅れており、1~3月の供給は予定の1億2,000万回分を大きく下回る3,000万回分だけだった。1億8,000万回分が予定されていた4~6月は7,000万回分にとどまる見込みだ。このため、欧州委は4月、同社を契約違反でベルギーの裁判所に提訴していた。

EU側の代理人は26日の口頭弁論で、4~6月の供給を2,000万回分増やし、計9,000万回分とするよう要求。これを順守しなければ、7月1日から供給遅延1回分につき1日当たり10ユーロの補償金を支払うよう求めた。仮にアストラゼネカが7月1日時点で2,000万回分を追加供給できない場合、同日だけで2億ユーロの支払いを迫られる形となる。さらに、契約違反の罰金として、各契約ごとに1,000万ユーロ以上の支払いを命じるよう裁判所に求めている。

アストラゼネカはEUとの事前購入契約が定める供給予定量はあくまで目標で、法的拘束力はないと反論。供給の遅延はワクチン生産工程が複雑なためで、不可抗力事由に当たるとして徹底的に争う構えだ。これに対してEU側は、5,000万回分をEUに回す余裕があったのに、英国など他の国への供給を優先するなど、「EUとの契約を尊重しようとさえしなかった」と批判し、巨額の補償を要求した。

次回の口頭弁論は6月4日。裁判所は6月末までに判決を下す見込みだ。

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