環太平洋経済連携協定(TPP)の加盟11カ国は2日、オンライン形式で閣僚級会合のTPP委員会を開き、英国の加盟交渉を開始することで合意した。実現すると、2018年12月の発効以来、初めて新規加盟国を受け入れることになる。
TPP委員会は英国との交渉入りを全会一致で決めた。作業部会を設置し、英国が加盟基準を満たしているかを審査する。加盟には批准国による全会一致の承認が必要で、結論が出るまでに1年近くかかるとの見方もある。
2020年末にEUを完全離脱した英国は独自の通商政策を進めており、その一環として今年2月にTPP加盟を申請した。発足メンバー11カ国のうち、日本やベトナムなどとは既に2国間協定を結んでおり、オーストラリアやニュージーランドとは現在、締結に向けて交渉中。アジア太平洋地域に広がる巨大な自由貿易圏に参加することで、経済成長を加速させる狙いがある。
トラス国際貿易相は交渉開始の決定を受け、「素晴らしいニュースだ。経済の比重を欧州から急成長を遂げている地域にシフトし、アジア太平洋地域の巨大な消費市場へのアクセスを強化する」と強調した。
英国が加入すると、TPP全体の国内総生産(GDP)は現在の約11兆ドルから14兆ドルに拡大し、EUの15兆ドルに匹敵する巨大経済圏が誕生。世界全体のGDPに占めるTPP加盟国の比率は13%から16%に高まる。
TPPを巡っては、タイが早い段階から参加を検討しているほか、中国や韓国なども関心を示している。英国の加入が実現すれば、TPP拡大に弾みがつく。加盟11カ国は声明で「アジア太平洋地域を越えて自由貿易を推進する機会になる」と強調。議長国を務める日本から出席した西村康稔経済再生相は「英国との交渉は先例になる。できるだけ早く協議を始めたい」と述べた。