欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2021/6/14

EU情報

ECBの金融緩和、景気回復・物価上昇でも維持

この記事の要約

欧州中央銀行(ECB)は10日に独フランクフルトで開いた定例政策理事会で、コロナ禍対応として実施している資産購入など大規模な金融緩和策の維持を決めた。景気が回復に向かっており、物価も上昇しているが、金融緩和の縮小は時期尚 […]

欧州中央銀行(ECB)は10日に独フランクフルトで開いた定例政策理事会で、コロナ禍対応として実施している資産購入など大規模な金融緩和策の維持を決めた。景気が回復に向かっており、物価も上昇しているが、金融緩和の縮小は時期尚早と判断した。

ユーロ圏の2021年1~3月期の域内総生産(GDP)は前期比で0.3%減少し、2期連続のマイナス成長となった。しかし、欧州ではワクチン接種が加速して新規感染者が減少傾向にあり、営業・行動制限の緩和が進んでいることから、4~6月期はプラス成長となるのは確実だ。消費者物価も急速に持ち直し、5月のインフレ率は前年同月比2.0%となり、ECBが目標とする水準に達した。

ECBは同日発表した最新の内部経済予測で、21年の成長率を4.6%とし、前回(3月)の4.0%から大幅に上方修正。22年は4.1%から4.7%に引き上げた。21年の予想インフレ率は1.5%から1.9%に上方修正した。

それでも、ECBは金融緩和の柱で、「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」と呼ばれる国債、社債などの資産を買い入れる措置(購入枠1兆8,500億ユーロ)を予定通り少なくとも22年3月末まで継続する意向を表明。向こう3カ月は資産購入を1~3月期より「かなり速いペース」で進めるという前回の理事会で決めた方針も変えなかった。主要政策金利を0%、中銀預金金利をマイナス0.5%に据え置くことも決めた。

金融緩和の継続を決めたのは、物価上昇がエネルギー価格の上昇など一時的要因によるもので、なお基調は弱いとみているためだ。22年の予想インフレ率は1.5%と、目標水準を割り込む。景気の先行きがコロナ禍の動向によって左右されるという不透明な状況が続くことも考慮した。ラガルド総裁は理事会後の記者会見で、現時点での金融緩和の縮小は「時期尚早だ」と述べ、国債購入を続けることで長期金利を低めに抑え、経済活動を下支えする必要があるとの見解を示した。