自動車大手の独フォルクスワーゲン(VW)は9日、ディーゼル車排ガス不正問題をめぐり、マルティン・ヴィンターコルン元社長などVWグループの元役員4人が同社に損害賠償を支払うことで合意したと発表した。当時の責任者との民事上の争いは山を越えたことになる。一方、ベルリン検察当局は同日、同問題に絡んでヴィンターコルン氏を偽証罪で起訴したと発表しており、同氏は新たな刑事訴訟を抱え込むことになった。
VWは2007年に米国で導入された窒素酸化物(NOx)の厳しい排ガス基準を同社のディーゼル車が遵守できないことから、違法なソフトウエアを搭載し、台上試験でのみ排ガス浄化機能が適切に働くようにした。この事実は15年9月、米環境保護庁(EPA)の発表で明らかになった。
VWは弁護士事務所に依頼した調査の結果、当時社長だったヴィンターコルン氏などが株式法上の注意義務に違反していたと判断。損害賠償の支払いを請求していた。今回の合意でヴィンターコルン元社長は1,120万ユーロ、子会社アウディのルーパート・シュタットラー前社長は410万ユーロ、アウディのシュテファン・クニルシュ元取締役(開発担当)は100万ユーロ、子会社ポルシェのヴォルフガング・ハッツ元取締役(開発担当)は150万ユーロを支払う。VWはこのほか、保険会社のコンソーシアムから総額2億7,000万ユーロの役員賠償責任保険(D&O保険)を受け取るため、損賠総額は2億8,780万ユーロとなる。今回の合意は7月22日に開かれる株主総会の承認を経て発効する。
アウディのウルリヒ・ハッケンベルク元取締役(技術担当)とは損賠合意できなかった。アウディは同氏を提訴する意向だ。
ヴィンターコルン氏は17年1月19日に開かれた独連邦議会(下院)の調査委員会で、排ガス不正の事実を知った時期をEPAによる発表のあった15年9月と証言した。これに対しベルリン検察当局は、同年5月の時点で事実をつかんでいたことを裏付ける証拠があるとして、偽証の容疑でベルリン地方裁判所に起訴した。