欧州議会とEU加盟国は25日、2023~27年を対象とする次期共通農業政策(CAP)の改革案で基本合意した。現行CAPの基本的な枠組みを維持しつつ、農家への所得補助となる直接支払いのより公平な配分、気候変動や環境保全への取り組みの強化、加盟国の裁量を拡大することなどを柱とする内容。欧州議会と閣僚理事会の正式な承認を経て、23年1月から新制度を導入する。
欧州委員会は18年6月に21~27年の中期予算計画案を公表し、その中で次期CAP予算は総額3,650億ユーロとされた。中期予算を巡る交渉が長引く中、欧州議会とEU加盟国は昨年6月、CAPについては少なくとも2年間の移行期間を設け、その間は現行CAPに基づくルールを適用することで合意。最終的に次期CAPの対象期間は23年1月からの5年間となった。
次期CAPでは引き続き直接支払制度と農村振興策という2つの柱を維持しながら、各国がそれぞれの実情に応じて柔軟に対応できるよう加盟国の裁量を拡大し、環境・気候変動対策や、持続可能な農業経営への移行を重点的に支援する。
直接支払いに関しては、予算の大半が大規模農家に割り当てられている現状を改善するため、加盟国は予算の少なくとも10%を中小農家、3%を40歳以下の若手農家の支援に充てることが義務付けられる。
一方、気候変動対策や環境保全に資する農業を推進するため、直接支払いの受給条件として全ての対象者に環境への取り組みを義務付け、例えば生物多様性を保持するため、耕作地の3%を休耕地とするルールなどを導入する。また、加盟国は直接支払い予算の少なくとも25%を「エコスキーム」に充てることが義務付けられ、有機農業や湿地生態系の回復など、環境・気候変動により積極的な農家に給付を上乗せする。加盟国はさらに、農村振興政策予算の少なくとも35%を環境・気候変動関連対策に配分することが求められる。
加盟国は自国の実態を踏まえ、課題に対応する上で必要な措置を特定して「戦略計画案」を策定し、21年12月末までに欧州委に提出する。欧州委は6カ月以内に承認の可否を決定。各国は承認された計画案に沿って施策を実施し、予め定められた共通の指標に基づき、戦略計画の実施状況や成果を1年ごとに報告する。