欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2021/7/5

EU情報

EUでワクチン証明書制度が本格始動、観光客の自由な往来可能に

この記事の要約

EUで1日、新型コロナウイルスワクチンの接種を受けた人などにEU共通の証明書を発行し、域内を自由に移動できるようにする制度の運用が正式に開始された。インドで確認された変異ウイルス「デルタ株」の感染拡大が懸念される中、バカ […]

EUで1日、新型コロナウイルスワクチンの接種を受けた人などにEU共通の証明書を発行し、域内を自由に移動できるようにする制度の運用が正式に開始された。インドで確認された変異ウイルス「デルタ株」の感染拡大が懸念される中、バカンスシーズンの本格化に合わせて観光の正常化に舵を切った。

同制度はEU各国が観光客など不要不急でない旅行者も安全に配慮しながら受け入れるようにするのが目的。「EUデジタルCOVID証明書」と呼ばれる証明書をワクチン接種者とPCR検査で陰性の人、コロナに感染して回復した人に無料で発行する。証明書はスマートフォンなどに保存されるデジタル方式と紙方式の両方で取得可能で、各国が取得者の入国時にQRコード化されたデータ(氏名、生年月日、接種したワクチンの種類、接種日や検査の記録など)をチェックする仕組みとなる。非EU加盟国のスイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインも参加する。

EUでは6月末までに観光立国のフランス、イタリア、スペイン、ギリシャなどを含む21カ国が同制度を導入していた。1日に残る国が導入し、本格的な運用が始まった。欧州委員会によると、これまでに2億人以上が証明書を取得した。

証明書を持つ人は、入国時のPCR検査、入国後の一定期間の隔離は原則的に不要となるが、変異したウイルスによる感染の急増などで各国が必要と判断すれば実施する権限を持つ。また、ある国からの渡航を証明書保有者であっても制限できる。ドイツはポルトガルでデルタ株の感染が拡大していることを受けて、同国からの入国を禁止した。ドイツ人の帰国は認められるが、14日間の自宅隔離が求められる。

EUはコロナ禍で大打撃を受けた観光業の復興を進めるため、域外からの渡航もワクチン接種を条件に受け入れることを5月に決定した。また、感染状況が落ち着いている国を「安全な国」と認定し、ワクチン接種の有無にかかわらず観光目的でも入域できるようにしている。1日にはカナダ、サウジアラビア、ヨルダン、カタール、アルメニアなど9カ国を新たに対象国のリストに加えた。これによって対象国は日米を含む23カ国に拡大した。