英政府が「補助金管理法案」発表、EU離脱に伴い独自ルール策定

英政府は6月30日、国や自治政府による公的補助の新たな法的枠組みとなる「補助金管理法案」を発表した。EU離脱によってEUの国家補助規定の適用を受けなくなったことを受け、独自に補助金制度の運用ルールを定める。国や自治政府、地方自治体の判断で、柔軟かつ迅速に支援できるようにするのが狙いだ。議会の承認を経て、2022年の施行を目指す。

EUルールの下では政府が補助金の交付や融資、融資保証などの支援策を講じる際、事前に欧州委員会に通知して承認を得なければならず、実施までに長い時間を要することも多かった。新ルールは「納税者に価値をもたらす」といった原則に照らし、政府や自治体が補助金の便益や競争、貿易、投資面のリスクを評価する仕組みで、歪曲リスクが小さく、政策目標に貢献すると判断した場合は補助金交付などの手続きが簡素化される。

一方、リスクが大きいと判断した場合はより詳細な評価が必要となり、特にリスクが大きい案件に関しては、競争・市場庁(CMA)内に新設する「補助金助言ユニット」が評価や助言を行う。

金額が小さい補助金や災害など緊急事態に対処するための補助金についてはさらに手続きが簡素化され、速やかな交付が可能になるが、無制限の政府保証や破綻企業に対する補助金交付は禁止される。また、補助金交付を条件に、国内の他の地域から企業や人材を誘致することも禁止される。

競合する企業に不当な補助金が交付されるなど、補助金の運用に関して異議がある場合、利害関係者は競争控訴審判所(Competition Appeal Tribunal=CAT)に申し立てを行い、決定の見直しを求めることができる。

クワルテング・ビジネス・エネルギー・産業戦略相は「(EUルールと比べて)英国の新たな補助金制度はより迅速で柔軟な内容だが、政府による経済の支配や勝者の選択、持続可能性のない企業の救済といった1970年代の失敗を繰り返してはならない。公的補助は地域社会に貢献し、納税者に価値をもたらすものでなければならない」と強調。スカリー・ビジネス担当閣外相は「迅速かつ戦略的に経済回復を支援」しながら、補助金に関して「一貫性のある平等な競争条件を確保する」と表明。新ルールには自治政府などの裁量を拡大する一方、企業誘致などを目的とした自治体間の「補助金競争」を防ぐ狙いもあると述べた。

政府補助金を含む平等な競争条件は、EUとの自由貿易協定締結に向けた交渉で最大の争点だった。EUは公平な競争環境を確保するため、英国が完全離脱後もEUの競争法や公的補助、環境、労働者の権利などに関するルールに従うことを要求し、交渉が難航。公的補助については最終的に、EU企業が英企業に対する政府の不当な補助で損害を受けたと判断すれば、英国の裁判所に提訴できる仕組みの導入や、EUが報復関税を課すことができるようにすることで折り合った。こうした経緯から、補助金助言ユニットの新設やCATへの異議申立てなどが今回の補助金管理法案に盛り込まれた。

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