欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2021/7/12

EU情報

21年のユーロ圏成長率、4.8%に上方修正=欧州委

この記事の要約

欧州委員会は7日に発表した夏季経済予測で、ユーロ圏の2021年の域内総生産(GDP)実質伸び率を4.8%とし、前回(5月)の4.3%から0.5ポイント上方修正した。新型コロナウイルスワクチンの接種が加速し、経済・社会活動 […]

欧州委員会は7日に発表した夏季経済予測で、ユーロ圏の2021年の域内総生産(GDP)実質伸び率を4.8%とし、前回(5月)の4.3%から0.5ポイント上方修正した。新型コロナウイルスワクチンの接種が加速し、経済・社会活動の制限緩和が進んでいることなどで経済が予想より早く正常化すると見込み、大幅に引き上げた。(表参照)

22年の予想成長率も前回の4.4%から4.5%に上方修正した。EU27カ国ベースでは21年が4.8%、22年が4.5%で、それぞれ前回の4.2%、4.4%から引き上げた。

EUではワクチン接種が進み、これまでに成人の62%が少なくとも1回の接種を受けた。2回の接種を終えた人は45%に上る。このため、感染拡大が抑えられ、経済の正常化が進んでいる。

欧州委はこうした要因に加えて、ユーロ圏の21年1~3月期のGDPが前期比0.3%減となったものの、下げ幅が前回予測で参考とした速報値の0.6%を大きく下回ったことから、大幅に上方修正した。

欧州委がとくに復調を見込んでいるのがサービス業。新型コロナワクチンの接種を受けた人などにEU共通の証明書を発行し、域内を自由に移動できるようにする制度の本格運用が1日に始まったためで、コロナ禍で大打撃を受けていた旅行業界などが持ち直すと期待している。このほか、EUの「コロナ復興基金」が加盟国への資金配分を開始したことも景気回復を後押しする見通しだ。

欧州委は5月の予測で、ユーロ圏の21年の予想成長率を前回(2月)の3.8%から0.5ポイント上方修正していた。これに続く大幅な上方修正となる。EU主要国の21年の予想成長率はドイツが3.6%、フランスが6.0%、イタリアが5.0%、スペインが6.2%となっている。

域内では感染力が強いデルタ株(インド型変異ウイルス)の流行、半導体不足で独自動車産業の雲行きが怪しくなるなど不安要素もある。欧州委はこれを勘案しながらも、ワクチン接種の進展など追い風の効果がリスクを上回るとして、景気の先行きに対する楽観的な見方を変えなかった。前回予測では、ユーロ圏の成長率がコロナ禍前の水準に回復するのは22年1~3月期と予想していたが、21年10~12月期に前倒しした。

欧州委は物価も原油価格の上昇、半導体など生産資材の値上がり、内需回復などで上昇し、20年に0.3%にとどまったユーロ圏のインフレ率が21年は1.9%に達すると予測した。0.2ポイントの上方修正となる。22年には物価上昇圧力が弱まり、1.4%に縮小すると見込んでいる。