EUは12日開いた外相理事会で、途上国や新興国のインフラ整備を支援する枠組みの構築で合意した。中国が進める巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗し、透明性が高く、持続可能で環境に配慮した支援を実現する。
外相理は「グローバルに連結した欧州」と題する文書を採択した。同文書はEUが経済、外交、安全保障上の利益を促進し、欧州の価値を高めるため、世界の幅広い地域で連結性を強化する必要があると強調。志を同じくする国・地域と連携し、物理的なインフラ構築と規制の枠組みの両面で途上国や新興国を支援する重要性を説いている。
欧州委員会と対外行動庁が加盟国や関連機関と協力し、2022年春までに文書の内容に沿って具体策をまとめる。道路や港湾などの整備やデジタル化対応といった重要インフラのうち、特に影響の大きいプロジェクトを支援の対象として特定すると同時に、投資を促進するための合理的な資金調達の枠組みを構築し、民間投資を呼び込むための環境整備を進める。
中国は一帯一路の一環として、途上国などのインフラ整備に資金提供しているが、重い債務や環境への影響、労働者の権利などが問題視されている。外相理が採択した文書に直接的な言及はないものの、中国を念頭に置いているのは明らか。ドイツのマース外相は記者団に対し「中国が経済および財政的手段を用いて、世界のあらゆる場所で政治的影響力を強めている。EUと米国が緊密に連携し、途上国などに新たな選択肢を示すことが重要だ」と述べた。
途上国や新興国に対するインフラ支援をめぐり、EUはこれまでに日本およびインドと「連結性とインフラに関するパートナーシップ」を締結している。また、6月に英国で開いた主要7カ国首脳会議(G7サミット)は、インド太平洋地域からアフリカ、中南米を含む世界各地の途上国や新興国で、透明性が高く、持続可能で、地球環境に優しい形でのインフラ整備を支援していく方針を打ち出した。