欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/4/7

EUその他

欧州議会が通信規制改革案を可決、ローミング料上乗せ廃止など柱

この記事の要約

欧州議会は3日の本会議で、通信分野における単一市場の創設を目的とした通信規制改革案を賛成多数で可決した。事業者間の公正な競争を促進し、消費者に低価格で質の高いサービスを提供するのが規制改革の狙い。契約している携帯通信事業 […]

欧州議会は3日の本会議で、通信分野における単一市場の創設を目的とした通信規制改革案を賛成多数で可決した。事業者間の公正な競争を促進し、消費者に低価格で質の高いサービスを提供するのが規制改革の狙い。契約している携帯通信事業者のサービス区域外で携帯電話を利用する際に生じるローミング料金について、EU域内の他の国で使用する場合(国際ローミング)に国内でのローミング料に上乗せすることを禁止する。「ネットワーク中立性」の原則なども盛り込まれている。EU加盟国の承認を経て新ルールが導入される。

法案によると、携帯電話事業者は2015年12月15日までに、域内の他の国で携帯電話を使用する際のローミング料上乗せを廃止しなければならない。欧州委員会が昨年9月に打ち出した原案では同措置の期限が16年末となっていたが、欧州議会では1年前倒しする修正案が採択された。

欧州委は域内のどこにいても国内と同じ料金でサービスを利用できるようになれば、携帯電話の利用者が今後さらに増加すると説明しているが、携帯電話事業者は重要な収益源を失うことになるため、業界団体などが反発を強めている。ドイツテレコムやスペインのテレフォニカなどが加盟する業界団体ETNOは、ローミング料金の厳格な規制によって収益が圧迫されることで、将来の投資計画に深刻な影響が及ぶと警告。さらにアナリストの間では、国際ローミングの上乗せ廃止が業界全体で5%前後の収益悪化につながるとの見方も出ている。

一方、携帯ローミングと並んで最大の焦点だったネット中立性原則の基づき、インターネット接続事業者(ISP)が自社と競合するサービスなどに対して、意図的に通信速度を遅くすることや、データ通信量の制限、不当に高い通信料金を請求するといった差別的行為が禁止される。これはスマートフォンの急速な普及などを背景に、ネット上でやりとりされる情報量が許容範囲ぎりぎりまで増えている中で、大手通信会社がIP電話の「スカイプ」やグループチャットサービス「ワッツアップ」などの利用を制限している実態が明らかになったことを受けた措置だ。米国では動画配信サービスのネットフリックスがケーブルテレビ最大手コムキャストと結んだ契約のように、資金力のあるコンテンツプロバイダーが優先的に高速接続を確保する見返りとして、トラフィックの増大に伴う追加的な費用負担に応じる動きが広がりつつあるが、新ルールの導入により、ISPはすべてのトラフィックを平等に扱うことが義務付けられる。

法案にはこのほか、携帯電話やブロードバンド接続サービスの契約における顧客保護の強化や、第4/第5世代移動通信システムへの投資促進を目的としたEUレベルでの周波数管理などが盛り込まれている。