欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/4/14

総合 – 欧州経済ニュース

ギリシャが国債入札再開、5年物で30億ユーロ調達

この記事の要約

債務危機で国債入札を2010年から凍結していたギリシャ政府は10日、5年物国債の入札を実施し、30億ユーロを低利で調達した。4年ぶりの国債市場復帰により、危機終息、国際金融支援の脱却に向けて大きな弾みがついた格好だ。 政 […]

債務危機で国債入札を2010年から凍結していたギリシャ政府は10日、5年物国債の入札を実施し、30億ユーロを低利で調達した。4年ぶりの国債市場復帰により、危機終息、国際金融支援の脱却に向けて大きな弾みがついた格好だ。

政府は9日に国債入札の再開を発表。翌日に5年物国債の入札を実施した。調達金利は、前回(2010年)の6.1%を大きく下回る4.95%。当初は25億ユーロを調達する予定だったが、需要が旺盛で、応募が200億ユーロを超えたことから、発行枠を5億ユーロ拡大した。

信用不安で深刻な債務危機に陥ったギリシャは、EUと国際通貨基金(IMF)から2010年に1,100億ユーロ、12年に1,300億ユーロの緊急金融支援を取り付けながら、厳しい緊縮策を柱とする財政再建に取り組んできた。その結果、2013年にプライマリー・バランス(基礎的財政収支)が黒字化するなど状況が好転。2012年に30%を超えていた10年物国債の流通利回りも、危険水域とされる7%を大きく割り込んでいた。このため政府は国債入札の再開に踏み切った。

ギリシャの長期国債は、米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)など3大格付け会社が依然として投機的水準に格付けしている。しかし、ユーロ圏、米国などの超低金利や、欧州中央銀行(ECB)が先ごろ量的金融緩和を示唆したことに支えられ、応募が殺到した。財務省によると、応募したのは550を超える機関投資家。うち9割が海外から寄せられた。

ギリシャに端を発した債務危機が波及し、EUとIMFから金融支援を受けたユーロ圏の国では、すでにアイルランドとポルトガルが国債市場に復帰。アイルランドは昨年12月に金融支援を脱却した。同危機の震源地で、一時はユーロ圏からの離脱さえささやかれたギリシャが国債入札に成功し、小規模ながら自力で資金を調達できるようになったのは、ユーロ圏にとって大きな朗報だ。これを受けて、同日には重債務国であるイタリア、スペインの国債に対する需要も高まり、10年物国債の利回りが低下した。

ギリシャのサマラス首相は、「ギリシャは危機脱却に向けた確固たる一歩を記した」と述べた。しかし、ギリシャ経済はマイナス成長が続き、失業率は26%を超えている。国民の不満は強く、同日にはアテネ中心部のギリシャ中央銀行の前で自動車爆破事件が起きた。大きな課題となる構造改革も、連立与党の議席が過半数ぎりぎりの状態で、進展が危ぶまれており、なお試練は続きそうだ。