EU統計局ユーロスタットが7月30日に発表したユーロ圏の同月のインフレ率(速報値)は前年同月比2.2%となり、前月の1.9%から0.3ポイント拡大した。低迷していた原油価格の上昇などが物価を押し上げており、欧州中央銀行(ECB)が新たな目標とする2.0%を超え、18年10月以来の高水準に達した。(表参照)
分野別の上げ幅はエネルギーが14.1%となり、前月の12.6%を大きく上回った。工業製品は0.7%、サービスは0.9%だった。
インフレ率はすべての国で上昇。主要国はドイツが3.1%、フランスが1.6%、イタリアが0.9%、スペインが2.9%となっている。
インフレ率の拡大は原油価格の上昇や、ドイツで付加価値税(VAT)減税が12月に終了したことなど一時的要因が大きい。ECBが金融政策で重視する基礎インフレ率(価格変動が激しいエネルギー、食品・アルコール・たばこを除いたインフレ率)は前月の0.9%を下回る0.7%にとどまっており、物価の基調は依然として弱い。
ECBは7月8日に金融政策の戦略見直しを発表し、インフレ率の目標を従来の「2%未満でそれに近い水準」から「2%」に引き上げた。物価の一時的な上振れを容認することで、金融緩和策を長期的かつ柔軟に継続できるようにする狙いがある。
年内はインフレ率の拡大が続く見込みだが、ECBは一時的要因の影響がなくなる22年以降は縮小に転じるとみている。22日に開いた定例政策理事会では金融政策の方向性を示す指針「フォワードガイダンス」を変更し、超低金利政策をインフレ率が新たな目標水準である2%に達し、さらに当面は同水準を維持すると判断するまで継続する方針を打ち出していた。