欧州銀行監督機構(EBA)は7月30日、域内の大手銀行50行を対象に実施したストレステスト(健全性審査)の結果を公表した。新型コロナウイルス感染症の影響が長期化して向こう3年間にわたり経済縮小が続く最も厳しいシナリオでは、伊モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ)銀行の中核的自己資本(CET1)比率がマイナスに陥る可能性があるほか、ドイツ銀行や仏ソシエテ・ジェネラルなどの同比率が全体の平均を下回るとの結果が示された。
EBAは隔年で実施しているストレステストを当初は2020年に予定していたが、新型コロナへの対応を考慮して今年1月に延期し、7月末までに結果を公表する方針を示していた。英国のEU離脱に伴い、今回のテストでは同国に拠点を置く銀行は対象から除外された。
EBAは23年にかけてEUの実質域内総生産(GDP)が3.6%縮小し、失業率が12.1%に達するという悪化シナリオを用い、対象行が金融市場の混乱に対応できる十分な資本を保有しているかどうかを評価した。その結果、同シナリオでは50行全体で約2,650億ユーロの損失が発生し、自己資本のうち主に普通株式と内部留保で構成されるCET1比率は、18年に実施した前回テストの平均15%から10.2%に低下すると試算した。対象となった50行は域内の銀行資産の約7割を占めている。
CET1比率を全体としてみると、健全性の目安とされる5.5%は大きく上回っているが、経営難で公的支援を受けているモンテ・パスキは前回テスト時の9.86%からマイナス0.1%に下落する見通し。モンテ・パスキの買収に向け、29日にイタリア政府との独占交渉に入ったと発表した伊ウニクレディトのCET1比率は、15.14%から9.22%に低下すると試算している。
EBAはこのほか、ドイツ銀行とソシエテ・ジェネラルのCET1比率がそれぞれ13.63%から7.43%、13.16%から7.54%に低下し、仏BNPパリバ(8.28%)や独コメルツバンク(8.52%)などと共に域内大手行の平均を下回って、「最も脆弱な一角」を成す可能性があるとの見方を示している。