仏製薬大手サノフィは3日、米バイオ医薬品企業トランスレート・バイオを32億ドルで買収することで合意したと発表した。トランスレート・バイオは新型コロナウイルスワクチンの開発で脚光を浴びているメッセンジャーRNA(mRNA)技術を活用した医薬品に特化した企業。サノフィは同分野の将来性を期待し、提携関係にある同社の買収を決めた。
サノフィは株式公開買い付け(TOB)を実施し、トランスレート・バイオの全株式を取得する。1株当たりの買い取り価格は2日の終値に30.4%を上乗せした38ドル。2021年9月末までの買収手続き完了を見込んでいる。
トランスレート・バイオは安全性が高く迅速な製造が可能とされるmRNAワクチンの開発を手がける企業。サノフィは同社と18年からワクチン開発で提携している。20年6月には提携を拡大し、新型コロナワクチンを共同開発すると発表していた。
新型コロナのmRNAワクチンは米ファイザーと独ビオンテックの連合、米モデルナのワクチンがすでに世界中で承認され、接種の主流となっている。サノフィは出遅れており、トランスレート・バイオと開発中のワクチンは臨床試験(治験)の最終段階に至っていない。英グラクソ・スミスクライン(GSK)と共同で開発している遺伝子組換えタンパク質をベースとしたタイプのワクチンも、5月に治験の最終段階に入ったばかりだ。
サノフィはコロナ禍を機に、季節性インフルエンザなど新型コロナ以外の感染症でもmRNAワクチンの利用が進むと期待し、同分野で強い技術力を持つトランスレート・バイオの買収に踏み切った。