英政府は26日、EU離脱を受けた新たなデータ政策の一環として、米国やオーストラリアなどとの間で個人データの移転に関するパートナーシップの構築を目指すと発表した。国際間のデータ移転に関連した不必要な負担を軽減し、貿易や投資を促進するのが狙い。ただ、EUとの協定では、法改正によって十分な保護水準が確保されなくなった場合、EU側は英国に付与した一般データ保護規則(GDPR)に基づく「十分性認定」を取り消すことができることになっており、欧州委員会は英側の動向を注意深く見守ると牽制している。
デジタル・文化・メディア・スポーツ省は「データ十分性(data adequacy)パートナーシップ」について、高い水準のデータ保護を維持しながら、英企業が重要な市場や急速に成長する経済圏の取引相手と容易にデータのやり取りができるようにするためのもので、国境を越えたデータ移転にかかる不当な障壁や条件を取り除くのが狙いと説明。パートナーシップ締結の優先地域として米国、オーストラリア、韓国、シンガポール、ドバイ、コロンビアを挙げた。なお、英国はすでに日本やカナダ、ニュージーランドなどとデータ移転に関する取り決めを結んでいる。
ダウデン・デジタル相は「EUからの完全離脱を機に、世界をリードするデータ政策を策定し、英国内の個人と企業にブレグジットで得た利益を分配することを決めた。このため現行のデータ保護法を見直し、官僚主義的な手続きではなく、常識に基づいてデータ移転ができるようにする」と述べた。
ダウデン氏はそのうえで、「データが後押しする成長とイノベーションを推進」するため、データ保護当局である情報コミッショナー事務局(ICO)の権限を強化する方針を表明。現在、ニュージーランドのプライバシーコミッショナーを務めるジョン・エドワーズ氏を次期情報コミッショナー優先候補に指名した。
英国がデータ移転に関するルールの見直しに着手したことで、EUと対立する事態に発展する可能性がある。欧州委の報道官はロイター通信の取材に対し、当面は英国の動向を注視すると発言。「英国は以前から、EU離脱後に独自のデータ保護制度を構築する方針を示しており、EU側は十分性認定を採択する際、同国がGDPRから逸脱する可能性があることを十分に認識していた。法改正によって個人データの保護水準に悪影響が及ぶと判断した場合、欧州委は直ちに十分性認定を取り消したり、中断することができる」と強調した。