EUが「対米依存」低減・「自立性」強化へ、首脳会議で安保政策確認

EUは5日、議長国スロベニア北西部クラーニで非公式の首脳会議を開き、安全保障政策について協議した。アフガニスタンをめぐる混乱や、米英豪3カ国による新たな安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」の創設を機に、過度な米国依存への懸念が広がっている現状を踏まえ、安保・防衛分野におけるEUの自立性を高める方針を確認した。

加盟国は米英豪がEUに事前に知らせずにオーカスを創設し、それに伴いオーストラリアがフランスとの潜水艦共同開発計画を破棄したことを問題視しつつ、EUとしても9月に発表したインド太平洋戦略に沿って日米間などとの協力体制を構築する必要があるとの認識で一致。人権問題などを巡り関係が冷え込んでいる中国に関しては、「競争相手であり、同時にパートナー」(ミシェルEU大統領)と位置づけ、対決姿勢を鮮明にしている米国とは一線を画し、経済面などで利益を得る機会を追求する方針を確認した。また、アフガニスタンについては人道支援を継続することで一致した。

ミシェル氏は声明で「最近起きたいくつかの危機を教訓として、重大な依存関係を減らすことでEUの強靭さと回復力を高めることができる」と強調。引き続き米国などとの協力関係を維持する一方、「EUが国際社会でより効果的に主張するには、自立的に行動する能力を高める必要がある」と述べた。

ボレル外交安全保障上級代表が11月に新たな安保・防衛戦略案をまとめ、来年3月に予定する首脳会議での採択を目指す。EU内ではアフガニスタンから駐留米軍の撤収を強行した米国への不満や、軍事面で米国に依存する現状への懸念が広がっており、フォンデアライエン欧州委員長が9月の施政方針演説で提唱した「欧州防衛連合」の実現に向けた動きが活発化する可能性がある。

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