ポーランドの憲法裁判所は7日、EU基本条約の一部条項は同国の憲法に適合せず、国内法がEU法より優先する場合があるとの判断を示した。ポーランドは司法の独立性が脅かされているとして、欧州委員会からくり返し改善を求められていたが、憲法裁が政府の立場を正当化した形。EU側は猛反発しており、メディアの独立性や性的マイノリティの権利などを巡り対立が続いているEUとポーランドの関係がさらに悪化するのは避けられない情勢だ。
ポーランドでは2015年の総選挙で愛国主義的な色彩の強い「法と正義」が政権を掌握して以来、違憲判決を出すのが難しくなるよう憲法裁判所の仕組みを変えたり、最高裁判事の人事権を政府が掌握するための法改正を行うなど、政権による司法介入を強める制度改革が進められてきた。欧州委は同国の司法制度改革がEUの基本理念である「法の支配」に反するとしてくり返し警告。EU司法裁判所も19年7月、最高裁判事の定年を引き下げる新法はEU法に違反するとの判断を示した。
しかし、ポーランドは制度停止を迫った司法裁の命令に従わず、20年2月には新たに裁判官の懲戒制度に関する法律を導入。最高裁判所に裁判官の懲戒処分を管轄する機関を設置した。裁判官の判断が政治活動に該当するとみなされた場合、免責の剥奪や職務停止、減給などの処分を受ける恐れがある。政府の意向に反する判決を阻止する狙いであることは明白で、欧州委は今年3月、EU司法裁に再び提訴。7月にはEU法違反の判決が出た。
ポーランドのモラウィエツキ首相はこれを受け、EU法と国内法が対立する場合、どちらを優先すべきかの判断を憲法裁に求めていた。憲法裁は今回、「04年のEU加盟後もEU司法裁に最高の法的権限が与えられたわけではなく、ポーランドの法的主権がEUに移ったわけでもない」と結論づけた。
欧州委は7日、声明を発表し、ポーランド憲法裁の判断は「EU法の優位性とEU司法裁の権限に関して深刻な懸念を引き起こす」と表明。EU法が加盟国の国内法に優先するとの原則を改めて強調した。欧州委は憲法裁の判決を精査したうえで今後の対応を決める方針で、ポーランドに厳しい制裁措置が科される可能性がある。