欧州委員会は13日、深刻化している域内のエネルギー価格高騰を受け、EUルールの範囲内で加盟国がとれる対策案を発表した。低所得層や中小企業向けの補助金や減税などの緊急支援策に加え、EUによる天然ガスの共同調達・備蓄の検討など中期的な対策が盛り込まれている。21、22両日に開くEU首脳会議で討議する。
EUでは新型コロナウイルス禍からの経済回復に伴う世界的な燃料需要の高まりなどを背景に、天然ガスの価格が高騰しており、これが電気やガス料金の値上がりを招いている。気候変動対策で各国が脱炭素政策を進めていることや、再生可能エネルギーの不安定さも天然ガスの需要を押し上げる要因になっており、冬場に向けてさらに需給がひっ迫する可能性も指摘されている。コロナ後の景気回復の腰折れ懸念が広がっており、加盟国からEUレベルでの対応を求める声が上がっていた。
欧州委はまず、エネルギー価格の高騰で苦境に立つ家計への短期的な対応策として、バウチャーの提供やエネルギー料金の一時的な支払い免除・軽減・猶予、支払いが困難な世帯へのエネルギー供給停止の回避など、エネルギー貧困層に対する直接的な支援策を勧告。危機に陥っている中小企業などへの支援策として、電力やガスにかかる税金の免除や、EU国家補助規定に沿った形での補助金支給などを提示した。
さらに中期的な対応策として、天然ガスの共同調達・備蓄のほか、エネルギー価格の変動を抑制するための規制の見直し、ガス貯蔵システムの開発支援、ガス供給に関するリスク分析を地域ごとに行う仕組みの構築などを検討する。
欧州委のシムソン委員(エネルギー担当)は記者会見で、「EUはエネルギー資源の輸入依存度を低減して価格を安定させるため、再生可能エネルギーへの移行を早める必要がある」と強調。再エネ事業への投資を拡大するとともに、入札や認可プロセスを迅速化するための指針を策定する方針を明らかにした。