EUがベラルーシへの制裁強化へ、ルカシェンコ政権はガス供給停止を示唆

旧ソ連のベラルーシに入国した中東などからの移民や難民がポーランドの東部国境付近に押し寄せている問題で、EUとベラルーシの対立が深まっている。EUは15日に外相理事会を開き、ベラルーシへの制裁拡大を協議する。欧米メディアによると、不法移民の流入に関与している企業など約30の個人・団体を対象とした制裁が科される見通し。一方、ベラルーシ側はEUが新たな制裁を発動した場合、EUへの天然ガス供給を停止する可能性を示唆し、制裁回避に向けて圧力を強めている。

EUはベラルーシのルカシェンコ政権が中東から移民を呼び寄せ、同国に制裁を科すEUへの報復として意図的に移民を送り込んでいると批判している。「欧州最後の独裁者」と呼ばれるルカシェンコ氏は長期にわたって強権的な統治を続けており、昨年8月の大統領選挙後には不正開票疑惑を巡る抗議デモを弾圧。EUはこれを受け、選挙結果の改ざんや反体制派の弾圧に関与した当局者ら約40人に対し、EU域内の資産凍結や渡航制限を科した。また、今年5月には反体制派のジャーナリストを拘束するため、民間機を強制着陸させる事件が発生し、EUは新たに同国への経済制裁を発動した。

ベラルーシ側はこうしたEUの対応に反発し、EUとの協定に基づいて実施してきた不法移民の取り締まりを停止した。このため夏以降、イラクやシリア、アフガニスタンなどからベラルーシ経由で隣国のポーランドやリトアニアに向かう移民や難民が急増。移民流入による社会の混乱を危惧するEUに圧力をかけ、制裁解除を迫る狙いとみられている。

ポーランド政府は1万5,000人の兵士を東部国境に配備し、不法移民の入国を阻止している。国境付近では数千人が簡易テントなどでの生活を余儀なくされており、寒さや食料不足でこれまでに少なくとも8人が死亡したとされる。

ルカシェンコ氏は11日、前日に欧州委員会のフォンデアライエン委員長がベラルーシへの制裁を強化する方針を明らかにしたことを受け、EUへの対抗措置として、ロシア産天然ガスを同国経由で欧州に運ぶパイプラインを止める可能性があると警告した。同氏は「われわれが欧州を温めている。ロシアと欧州を結ぶパイプラインを止めたらどうなるか、EUの指導者はよく考えるべきだ」と述べ、EU側をけん制した。

一方、トルコ政府は12日、シリア、イエメン、イラク国籍の人がトルコからベラルーシに向かう航空機に搭乗することを認めず、航空券も販売しないと発表した。中東からの移民がベラルーシ経由で欧州に流入する際の通り道になっているとして、EUがトルコに対応を求めていた。ロイター通信によると、イラク航空もEUとの間でベラルーシに向かう便の運航を停止することで合意した。

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