ドイツの次期政権を樹立する予定の社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)は24日、政権協定を発表した。3党はそれぞれが重視する政策分野で大臣ポストを獲得。政策内容面でも折り合いをつけた。政権協議中に悪化した新型コロナウイルスの感染状況については協定の前文で「最も緊急の課題」と明記しており、常設の危機対策本部を設置し対応する意向を表明した。3党は今後、党大会などで承認を得、SPDのオーラフ・ショルツ氏を首班とする新政権を12月9日までに打ち立てる見通しだ。
9月の総選挙で第1党となったSPDは、次期政権で内務・祖国、労働・社会、防衛、保健、建設、経済開発・協力の6大臣と官庁長官のポストを獲得する。選挙戦では最低賃金の大幅引き上げや年金負担・受給額の安定、住宅不足の早期解消を全面に打ち出しており、同党所属の労働・社会相と建設相は公約の実現に主導的に取り組むことになる。
緑の党は外務、経済・気候、家族・高齢者・女性・青少年、環境・自然保護・原子力安全・消費者保護、食糧・農業の5ポストを手に入れた。温暖化防止政策を展開する上で重要なポストを、交通を除いて掌握することになった。
小さな政府を掲げるFDPは財務、司法、交通・デジタル、教育・研究の4ポストを獲得した。クリスティアン・リントナー党首は選挙戦の最中から財務相就任に強い意欲を示しており、目的を達成した格好だ。増税と財政規律の緩和を認めないという公約を政権協定に盛り込むことにも成功している。
緑の党は石炭火力発電の全廃時期を現行法で定められた「2035~38年」ら30年へと大幅に前倒しすることを選挙で訴えてきた。しかし、10月中旬にまとめられた政権樹立予備交渉の合意文書では同発電を「可能であれば」30年にも全廃できるようにするという内容に後退。これに対し環境保護団体から強い批判が出たことから、同党は30年に確実に全廃できる内容へと3党合意を改めようとしたが、実現できなかった。国内炭鉱地域の産業構造転換計画に支障がでることをSPDが懸念したことが背景にあるもようだ。
緑の党の公約では、温暖化防止に反する法案に対し気候相が拒否権を発動できるようにするとした要求も実現しなかった。代わりに、各法案にそうした政策が含まれていないかどうかを関連省庁が法案作成段階でチェックすることが取り決められた。
次期政権は温暖化防止対策の強化とデジタル化の推進を重要課題に設定している。これには多額の資金が必要となるが、増税せずに十分な財源を確保できるかどうかには疑問の声が出ている。政策理念が大きく異なる3党の政権運営がスムーズに機能するかどうかにも関心が集まりそうだ。