欧州委員会は1日、原子力と天然ガスを脱炭素化に貢献するエネルギーと位置づけ、一定の条件下でグリーンな投資対象と認定する方針を発表した。両エネルギーに関連した事業を、2050年までに域内の温室効果ガス排出量を「実質ゼロ」にするとのEUの目標達成に貢献する「持続可能な経済活動」と認め、投資を呼び込みやすくする。
EUは環境問題の解決に貢献する持続可能な経済活動かどうかを仕分ける独自の基準「タクソノミー」を設けており、「気候変動の緩和」や「循環型経済への移行」など6つの環境目標を掲げる。欧州委はタクソノミー規則(20年6月採択)の細則を定めた委任規則でそれぞれの目的に合致した事業をリスト化しており、第1弾として1月1日付で「気候変動の緩和」と「気候変動への適応」をカバーする委任規則の適用が開始された。
およそ500ページに及ぶ「グリーンリスト」では、風力や太陽光発電所の建設、低排出ガス車の生産、エネルギー効率化のためのシステム開発など、幅広い事業がグリーン投資の対象として分類されているが、争点となっていた電力部門では石炭火力発電を一律でタクソノミーの適用外とする一方、加盟国間で意見が分かれる天然ガスと原子力ついて結論を先送りしていた。
タクソノミーを巡っては、フランスやフィンランド、チェコなどが原発を持続可能と分類するよう求める一方、石炭に依存するポーランドなど東欧諸国は天然ガスを移行期の技術として認めるべきだと主張。これに対し、原発廃止を掲げるドイツやオーストリアなどは、両エネルギーをタクソノミーに含めることに反対していた。
欧州委は今回、原子力と天然ガスをグリーンリストに追加する案について、両エネルギーは「再生可能エネルギーがベースとなる将来への移行を促進する手段として役割がある」と説明。持続可能との認定は移行期における一時的な位置付けである点を強調し、反対する国への配慮を示した。
欧州委はグリーンリストを更新した委任規則案について、12日までに加盟国の専門家グループなどから意見を求め、そのうえで月内にも最終案をまとめる。その後、閣僚理事会と欧州議会で協議し、否決されなければ適用が開始される。しかし、欧州委の発表を受けて早くもドイツやスペインなどから反発する声が上がっており、委任規則案は今後修正される可能性もある。
ドイツのハベック経済・気候相は3日、「金融市場が欧州委の提案を受け入れるかどうか疑わしい」と述べ、原発は「脱炭素に貢献する」との認定方針を強く批判。スペインのリベラ環境保護相も「グリーンエネルギーへの移行プロセスで誤ったシグナルを発信することになる」と指摘した。
ベルギーは25年に全原発閉鎖へ
ベルギーで連立政権を構成する7党は12月23日、計画通りに国内に7基ある原子炉を全て2025年までに閉鎖することで合意した。同国では03年に25年の原発全廃を決定したが、代替電源の確保が遅れ、計画が先延ばしされるとの見方も出ていた。
現在は国内2カ所で原発を稼働させているが、近隣諸国からは老朽化を懸念する声も上がっている。7党は原発の廃止目標を維持する一方、小型モジュール原発(SMR)など次世代原発の開発は認める方針で一致した。