2022/1/17

EU情報

英との北ア問題巡る交渉、代表者交代で打開の機運

この記事の要約

英国がEU離脱協定に盛り込まれた「北アイルランド議定書」の大幅な見直しを求めている問題をめぐるEUと同国政府の協議が、13日に再開された。進展はなかったものの、英国の代表が対EU強硬派のフロスト内閣府担当相からトラス外相 […]

英国がEU離脱協定に盛り込まれた「北アイルランド議定書」の大幅な見直しを求めている問題をめぐるEUと同国政府の協議が、13日に再開された。進展はなかったものの、英国の代表が対EU強硬派のフロスト内閣府担当相からトラス外相に交代したことで雰囲気が大きく変わり、双方は合意を目指して集中的に協議を行うことで一致。膠着状態の打開に向けた機運が高まってきた。

今回の協議は、トラス外相がEU側代表のシェフチョビチ副欧州委員長を英ケント州にある私邸に招き、13、14日の2日間にわたって行われた。両者は初顔合わせとなるため、具体的な問題に関する突っ込んだ話し合いはなかった。

ただ、協議終了後に発表された共同声明によると、話し合いは「友好的な雰囲気」で行われ、妥結に向けた協議を加速させることで合意。次週に事務レベルで集中的な交渉を行い、24日にトラス外相とシェフチョビチ副欧州委員長が再び協議することが決まった。

北アイルランド議定書は、北アイルランドとアイルランドの紛争に終止符を打った1998年の和平合意の精神を踏襲したもの。英の離脱後も、北アイルランドと地続きで国境を接するEU加盟国アイルランドの間に物理的な国境を設けず、物流やヒトの往来が滞らないようにするのが目的だ。これによって北アイルランドはEU単一市場と関税同盟に残ることになった。

しかし、北アイルランドは英国領でありながらEUの通商ルールが適用される「特区」のような存在となり、英本土から北アイルランドに流入する食品など物品については、国内の移動であるにもかかわらずEUの厳しい食品・衛生基準を満たさなければならず、通関・検疫が必要になるといった歪みが生じた。これを解消したい英政府は、議定書のうち北アイルランドに適用される通商ルールの見直しを求めている。

EUは北アイルランドで生じている問題は予想されていたもので、それを承知の上で議定書に調印した英政府に責任があるとして、英のちゃぶ台返しに反発している。それでも、英国との関係が決定的に悪化するのを避けるため、10月に英本土から入る物品の通関・検疫手続きを大幅に緩和する譲歩案を提示。衛生植物検疫措置(SPS)を緩和して食品などの検疫検査を80%減らし、通関で必要な書類手続きを50%削減することなどを提案した。

しかし、12月17日に行われた前回の協議まで英国の代表を務めていたフロスト氏は強硬姿勢を貫き、さらなる譲歩を要求。EU応じなければ、議定書の特別条項で認められた権利を行使し、取り決めの一部を一方的に破棄することを明言していた。このため、双方は対立状態が続き、協議はほとんど進展していない。

これに対して、英国の新代表となったトラス外相は、話し合いによる解決を目指す姿勢を鮮明に打ち出し、フロスト氏との違いを強調している。今回の協議終了後の記者会見では、協議が進展しない場合は議定書の取り決めを破棄することも「検討しなければならない」としながらも、「人々のためになる取り決めを結ぶことが究極の望みだ」と述べるなど、前向きな発言が相次いだ。

フロスト氏は12月18日、ジョンソン政権の新型コロナ対策への不満などが理由に、内閣府担当相を辞任した。