欧州の金融機関、ウクライナ危機でリスク増大

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻で、欧州の金融機関が抱えるリスクが高まっている。今のところロシア事業に損失が出た場合でも、経営に深刻な影響が及ぶ可能性は低いとの見方が支配的だが、西側諸国による制裁の影響で事業を継続することが難しくなっており、米国の金融機関に続き、欧州勢からも撤退の動きが出始めた。

ドイツ銀行は11日、ロシア市場から段階的に撤退する方針を明らかにした。前日までロシア事業を継続すると表明していたが、制裁による損失拡大や企業イメージの低下を懸念する株主らの批判を受け、方針転換した。

ドイツ銀はロシアがクリミアを併合した2014年以降、ロシア向けのエクスポージャーを大幅に減らしており、21年末時点の与信残高は約6億ユーロ(約770億円)だった。

同行は声明で「ロシアに進出している一部の同業他社と同様に、段階的に既存事業の縮小を進めている。新たな事業も手掛けない」と表明した。クリスティアン・ゼービング最高経営責任者(CEO)は従業員に宛てた10日付の文書で、「ロシアからの撤退は当社の価値観に反する」と強調していた。

国際決済銀行(BIS)によると、21年9月時点で外国の金融機関によるロシア向けの与信残高は約1,200億ドルで、このうち7割近くをイタリア、フランス、オーストリアなどの欧州勢が占めている。

クレディ・スイス・グループは10日、ロシア向けの与信残高が21年末時点で8億4,800万スイスフランに上ると発表。イタリアのウニクレディトは同日、ロシア関連事業を完全に清算した場合、最大で約74億ユーロの損失を計上する可能性があることを明らかにした。さらに仏BNPパリバとスイスのUBSは21年末時点で与信残高がそれぞれ30億ユーロ、6億3,400万ドルとなっている。一方、仏ソシエテ・ジェネラルは186億ユーロと金額が大きいものの、全損となった場合でも中核的自己資本比率の低下は0.5ポイント程度にとどまるとの見方を示している。

米国の金融機関では、これまでにゴールドマン・サックスとJPモルガン・チェースがロシアからの撤退を表明している。

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