欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2022/3/21

EU情報

EUが「炭素国境調整措置」導入で基本合意、年内の法案成立目指す

この記事の要約

EUは15日開いた財務相理事会で、気候変動対策が不十分な国からの輸入品に課税する「炭素国境調整措置(CBAM)」の導入に関する規則案の内容で基本合意した。2023年から段階的に導入し、26年に完全実施する計画。加盟国の代 […]

EUは15日開いた財務相理事会で、気候変動対策が不十分な国からの輸入品に課税する「炭素国境調整措置(CBAM)」の導入に関する規則案の内容で基本合意した。2023年から段階的に導入し、26年に完全実施する計画。加盟国の代表で構成する作業部会が技術的な詳細を詰め、欧州議会との交渉を経て、年内の法案成立を目指す。

CBAMは国境炭素税とも呼ばれる。EU域内の事業者がCBAMの対象となる製品を域外から輸入する際、域内で製造した場合にEU排出量取引制度(EU-ETS)に基づいて課される炭素価格に対応した支払いを義務付ける内容。域内の企業が温暖化対策のための重いコストを負担し、規制の緩い域外の企業との競争で不利な立場に立たされる状況を阻止するとともに、EU企業が厳しい規制を理由に域外に拠点を移すことで、地球全体の温室効果ガス排出量が削減されない「カーボンリーケージ」を防ぐ狙いがある。

欧州委員会は21年7月、30年までにEU域内の温室効果ガス排出量を1990年比で55%削減する目標を達成するための政策パッケージ「Fit for 55」の一環として、CBAM導入に向けた規則案を発表した。規則案によると、課税対象は鉄鋼、アルミニウム、セメント、肥料、電力の5品目。23年から3年間を移行期間として輸入業者に報告義務を課し、26年から徴税を開始する。輸入業者は対象品目ごとに輸入相手国や前年分の輸入量を申告し、製造過程における排出量に応じてEU-ETSに基づく炭素価格分を支払うことになる。

欧州委の原案では、輸入業者はそれぞれ拠点を置く加盟国の当局への登録が義務付けられていたが、財務相理はEUレベルで登録を一元管理する仕組みに修正した。また、取引額が150ユーロ未満の場合はCBAMの適用が免除される。

EU議長国フランスのルメール財務相は会議後の記者会見で「気候変動との闘いにおける大きな一歩だ」と強調。「環境規制の緩い国からEUの産業を保護しながら、脱炭素化を加速させる手段を手に入れることができる。また、気候変動への取り組みが不十分な国に対策の強化を促すことにもなる」と述べた。