スペイン政府は3月29日、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー高騰で打撃を受けている家計と企業を支援するため、総額160億ユーロに上る追加の経済対策を閣議決定した。昨年から続くエネルギー価格の高騰に対応するため、政府はトラック運転手などに燃料補助金を支給しているが、対象を全ての国民に拡大することなどが柱。資金繰りが厳しい企業を支援するため、政府が利子を補助する特別融資も用意する。
経済対策の実施期間は4月1日から3カ月間。家計と企業への直接的な支援や減税に60億ユーロを拠出するほか、ウクライナ情勢の緊迫化に伴う燃料や原材料の高騰で苦境に立つ中小企業などの資金繰り対策として、100億ユーロの実質的な無利子融資を導入する。
計画によると、燃料高騰への対策として、政府がガソリン1リットル当たり0.15ユーロの補助金を支給すると共に、石油会社に少なくとも0.05ユーロの負担を求める。家計への支援策として、家賃の値上げも3カ月間は最大2%に制限する。
一方、企業はウクライナ情勢やロシアに対する経済制裁の影響を理由に従業員を解雇することはできないが、一時帰休制度を利用することができる。また、エネルギー集約型産業への支援策として、融資を受けた企業に対し、元金の返済を1年間猶予する。
新型コロナウイルス危機に続くウクライナ情勢の緊迫化により、スペインでは2月末時点でエネルギー価格が1年前と比べて60%上昇し、インフレ率を8%近くまで押し上げている。ガソリンやディーゼルの価格が一段と値上がりしたことから、3月中旬にトラック運転手が政府に対策を求めて無期限のストライキに突入。全土に広がったデモやストライキで物流が混乱し、スーパーでは生鮮食料品が不足するなどの影響が出た。政府は燃料補助金や運送業者への給付金など5億ユーロの支援策を打ち出したが、一部のトラック運転手は対応が不十分だとしてストライキを続けている。