ロシアのウクライナ侵攻を受け、スウェーデンの通信機器大手エリクソンとフィンランドの同業ノキアが相次いでロシア事業の無期限停止や撤退を表明した。ロシアの通信機器市場で約30%のシェアを占める両社が手を引くことで、中国の華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)などの存在感が高まる可能性がある。
エリクソンは11日、ロシア事業を無期限で停止すると発表した。同社は2月末時点でロシア向け製品の出荷を全て停止すると表明していた。ウクライナ侵攻が続く中、EUの対ロ制裁も踏まえて事業停止を決めた。
発表によると、現地の従業員は有給休暇の扱いとする。事業停止に伴う資産の減損などに備え、第1四半期に9億スウェーデンクローナ(約120億円)の引当金を計上する。
一方、ノキアは12日、ロシア事業から撤退すると発表した。約2,000人の従業員に影響が出るが、一部は他国での受け入れが可能になる見通し。2021年の売上高に占めるロシア事業の割合は2%未満で、第1四半期に1億ユーロの引当金を計上するものの、業績見通しに影響はないという。
ノキアは3月上旬にロシアへのネットワーク機器の納入や新規ビジネスの受け入れを停止し、研究・開発の拠点も国外に移転した。同社は声明で「人道的な観点から、西側諸国はロシアの通信インフラに支障が出るリスクを懸念している。ロシアの一般市民がインターネットを通じて国外の情報にアクセスできる状況を維持する必要がある」と指摘。ロシア市場からは撤退するものの、ネットワークインフラの保守・修理を継続するために必要なライセンスを申請する方針を示している。
ペッカ・ルンドマルク最高経営責任者(CEO)は「ウクライナへの侵攻が始まった時からロシアで事業を継続できる可能性はほとんどないと分かっていた。ロシアへの制裁がますます厳しくなり、最終的に撤退を決めた」と説明。事態が沈静化してEUなどによる制裁が解除された場合、ノキアはロシアへの復帰を検討するかとの質問に対しては、「今の段階で推測することはできない。ロシア市場に戻るには多くのことが劇的に変わる必要がある」と述べた。