英各地で5日行われた地方議会選挙は8日までに開票が終了し、ジョンソン首相率いる国政与党の保守党が480議席以上を失った。首相官邸でのパーティー問題や最近の物価高騰が逆風となり、敗北を喫した。ジョンソン氏は厳しい結果となったことを認めたうえで、物価高やエネルギー問題への取り組みを強化する姿勢をアピールし、引き続き政権を担う意欲を示した。
今回の地方選は英全土の200の自治体の議会で計7,000弱の議席を争った。英BBCによると、保守党は改選前の26%に相当する487議席を失った。首都ロンドンのウエストミンスターなど、伝統的な支持基盤としてきた11の選挙区で労働党などに主導権を奪われた。新型コロナウイルス感染拡大に伴う規制が続く中、首相官邸などで複数回にわたりパーティーが開かれたことでジョンソン氏に批判が集中し、求心力を失ったことなどが敗北の主な要因とみられる。
一方、労働党はロンドン市内の各自治体で票を伸ばし、全体で新たに108議席を獲得した。ただ、支持基盤のイングランド北部では限定的な勝利にとどまり、地元メディアは「国政選挙に影響を及ぼすほどの勢いはない」と評している。これに対し、自由民主党は改選前の約35%にあたる222議席を獲得し、緑の党も議席数を2倍以上に増やした。
ジョンソン氏は開票結果がほぼ出揃った6日、「厳しい夜だった」と苦戦を認めたうえで、「経済を前進させるため、物価高やエネルギー供給問題に取り組んでいく」と述べ、続投の意欲を示した。
5日には英領北アイルランドでも自治議会(90議席)の選挙が行われ、カトリック系のシン・フェイン党が最多議席を獲得して第1党となった。同党は北アイルランド紛争でテロ行為をくり返した過激組織アイルランド共和軍(IRA)の政治団体が前身で、アイルランドとの統合を目標に掲げている。シン・フェイン党が第1党となるのは今回が初めてで、地元メディアは「歴史的な勝利」と称している。
BBCによると、シン・フェイン党は改選前から10議席増やして27議席を獲得した。これまで首位を堅持してきたプロテスタント系民主統一党(DUP)は3議席減らして25議席となり、2位に転落。中道の北アイルランド同盟党(APNI)が9議席増やして3位に躍進した。