仏自動車大手ルノーが16日、ロシア撤退を発表した。モスクワ工場を運営する子会社ルノー・ロシアの全株式をモスクワ市に、「ラーダ」ブランドで知られるロシア自動車最大手アフトワズの67.7%をロシア国有の中央自動車・エンジン科学研究所(NAMI)に、それぞれ売却する。契約で今後6年間、株式を買い戻す権利を押さえ、「異なるコンテクストで」ロシア事業を再開する含みを残した。ロシア資産については、上半期決算で22億ユーロの減損損失を計上する。
取引額は明らかにされなかったが、ロイター通信が複数の消息筋の情報として報道したところによると、いずれも「1ルーブル」で、事実上の譲渡となる。他の欧米企業がロシアに資産を残したまま撤退するなか、ルノーはロシア当局との契約を踏むことで自社資産を「保存」し、再びグループに組み込む可能性を残した格好だ。
ただ、ロシア・ウクライナ戦争が短期で終息したとしても、6年以内にルノーがロシア市場に復帰できるほど、状況が正常化しているかどうかには疑問が残る。
モスクワのセルゲイ・ソビャーニン市長は、モスクワ工場でソ連時代の「モスクヴィッチ」ブランドを生産する方針を明らかにした。アフトワズはトリヤッチ工場でラーダの全モデルの生産を継続する計画だ。ロシア市場におけるルノー車の保守サービスも行うという。
ロシアがウクライナに侵攻して以来、H&Mやマクドナルド、イケアなど欧州の大手企業が次々とロシアから撤退した。ロシア当局はこれを受けて、外国企業の資産を国有化する姿勢を示していた。
ルノーは2007年にアフトワズに資本参加した。16年末に追加投資し、持ち株比率を67.7%まで引き上げた。ルノー・ロシアを含む現地従業員数が4万5,000人に上るなど、他の欧州メーカーに比べてロシア事業の規模が大きい。
ルノーグループの2021年ロシア販売台数は48万2,000台で市場シェアの30%を占める。そのうちの約38万5,000台がアフトワズだ。ルノーにとってロシアは欧州に次いで2番目の重要市場で、ロシアが欠ければ連結決算が赤字転落する可能性もある。
ルノーは3月にモスクワ工場の操業を停止し、アフトワズ株の扱いについて可能な選択肢を探ると発表していた。事業を休んでいても現地従業員の賃金などのコストはかかっており、今回のルノー事業「国営化」で、の負担は消えることになる。