欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2022/5/30

EU情報

EUが対ロ制裁逃れを「犯罪」に、円滑な資産押収に向け法整備

この記事の要約

欧州委員会は25日、EUが発動した制裁に対する違反行為を「犯罪」として扱う方針を示すとともに、経済制裁や犯罪に絡んだ資産の回収や押収に関する規則の強化を提案した。EU共通ルールの下で、ウクライナに軍事侵攻したロシアに対す […]

欧州委員会は25日、EUが発動した制裁に対する違反行為を「犯罪」として扱う方針を示すとともに、経済制裁や犯罪に絡んだ資産の回収や押収に関する規則の強化を提案した。EU共通ルールの下で、ウクライナに軍事侵攻したロシアに対する制裁の抜け道をふさぐのが最大の目的。制裁対象となったオリガルヒ(新興財閥)などの資産を押収できる仕組みを整え、ウクライナの復興支援に充てる狙いもある。

EUは対ロシア制裁の一環として、プーチン政権を支えるオリガルヒ約30人を含む1,000人以上を対象に、EU内の資産凍結や渡航禁止などの制裁を科した。ただ、資産の差し押さえなどは加盟国に委ねられており、制裁逃れを刑事罰の対象としている国や、事例ごとに刑事罰または行政罰の対象としている国、全て行政罰の対象としている国と、対応にばらつきがある。

欧州委は国によって異なる制裁の執行状況を域内で統一するため、制裁逃れなどの違反行為をテロや組織犯罪、人身売買、マネーロンダリング(資金洗浄)などと同等の犯罪と位置づけることを提案している。資産隠匿などの直接的な制裁回避に加え、弁護士などが資産の凍結を妨害したり、銀行が意図的に凍結を怠って制裁逃れを助けることや、禁輸対象品目の輸出入に関わることも違反行為とみなす。

EU加盟国の全会一致の合意と、欧州議会の承認を経て法制化する。

一方、欧州委は制裁違反を含む犯罪に絡んだ資産の回収や押収に関するルールの見直しを提案した。犯罪に関与した個人や団体が不正に得た資金の追跡や凍結、管理、押収にかかる手続きを簡素化し、各国当局が迅速に資産を凍結・押収できるようにするのが狙い。具体的には犯罪に絡んだ資産の回収を担当する部局の権限を拡大して、資産消失の恐れがある場合などに凍結だけでなく、押収もできるようにすることや、全ての加盟国に資産管理事務所を設置し、凍結した資産の価値が下がる前に売却するなどの措置を講じることができるようにする。

欧州委のヨウロヴァ副委員長(価値・透明性担当)は声明で「EUの制裁は尊重されなければならず、制裁を回避しようとする個人や団体は罰せられなければならない。制裁に対する違反行為は重大な犯罪であり、重大な結果を伴うものでなければならない。そのためにEU共通のルールが必要だ」と強調した。