サル痘ワクチンと治療薬を共同調達へ、欧州委が製薬会社と交渉

欧州委員会は27日、欧米を中心に感染報告が相次ぐ「サル痘」の流行を抑えるため、EU加盟国を代表してワクチンと抗ウイルス薬を共同調達する方向で準備を進めていることを明らかにした。サル痘にも有効とされる天然痘のワクチンと治療薬の確保に向けた製薬会社との交渉が進展しており、6月にもEU向けの供給が開始される可能性がある。

スウェーデンの日刊紙ダーゲンス・ニュヘテルが27日、同国のワクチン政策担当者の発言として報じた内容を、欧州委が大筋で認めた。同紙によると、欧州委はデンマークのバイオテクノロジー企業ババリアン・ノルディックの天然痘ワクチン「Imvanex」と、同業の米シガ・テクノロジーズが開発したtecovirimatと呼ばれる抗ウイルス薬(製品名「TPOXX」)の共同調達に向けて交渉を進めており、「今後1週間前後で契約が成立し、6月には限られた数量の製品が供給される見通し」と報じた。

欧州委の報道官はこれを受け、欧州委の1部局で公衆衛生上の危機に対応する「欧州保健緊急事態準備・対応局(HERA)」が中心となってサル痘への対応に取り組んでおり、欧州委が加盟国を代表してワクチンや治療薬の共同調達を実施する方向で「幅広い合意」に達したと説明。交渉を進めている製薬企業の具体名には触れず、「サル痘はウイルスの感染性やリスクが新型コロナウイルスとは大きく異なるため、ワクチン接種は極めて限られたケースに限定されることを念頭に置くことが重要だ」と指摘した。

サル痘は主にアフリカで流行する感染症で、ウイルスを保有した野生動物(ネズミやリスなどのげっ歯類)に触れることで感染する。感染者との身体的接触のほか、飛沫や体液に触れて感染する場合もある。サル痘は根絶した天然痘と似た特徴を持ち、発疹や発熱などの症状が出る。欧州疾病予防管理センター(ECDC)などによると、天然痘ワクチンにはサル痘に対して約85%の発症予防効果があるとされる。このため既に患者が確認されたスペインやドイツなどが天然痘ワクチンの確保に動いている。

ECDCは25日、EU域内で確認されたサル痘の感染は同日までに12カ国で118例に上ると発表した。最も多いのはスペインの51例で、ポルトガルが37例でこれに次ぐ。また、今回の流行の発端となった英国(5月7日に1例目を確認)では78例に上り、このほかカナダや米国、オーストラリアなどを合わせると、21カ国で計219例の感染が確認された。これまでのところ死亡例は報告されていない。ECDCによると、感染者の大部分は若い男性で、特に男性と性交渉する男性の割合が高いという。

上部へスクロール