後払い決済サービス大手のクラーナ(スウェーデン)は23日、世界全体で約7,000人に上る従業員のうち10%を削減する方針を発表した。資源高を起点とするインフレの加速や、ロシアのウクライナ侵攻を受けた消費者心理の変化など、世界情勢が激変する中でビジネス環境が悪化しているため、組織の見直しを進めて適材適所の人材配置を実現する。
クラーナは2005年の創業で、「BNPL(バイ・ナウ・ペイ・レイター)」と呼ばれるネット通販の際の後払い決済サービスを提供している。BNPLはクレジットカードがなくても買い物ができる手段として急成長しており、クラーナは約40万の取引企業と、若年層を中心に約1億5,000万人の利用者を抱える。ただ、新型コロナウイルス禍やウクライナ危機に伴う物価高騰や労働市場への打撃などを背景に、BNPLで高額商品を購入した利用者による支払いの遅れが同社の業績を圧迫しており、2022年第1四半期は65億8,000万スウェーデン・クローナ(約855億円)の営業損失を計上した。
創業者のセバスチャン・シミアトコフスキー最高経営責任者(CEO)は声明で「ウクライナでの悲劇的で不必要な戦争、消費者心理の変化、インフレの加速、不安定な株式市場など、22年は激動の年となった」と指摘。「事業計画を策定した21年秋以降に世界情勢が激変した」と強調し、厳しい現実に向き合うため人員削減という「最も困難な」決断に至ったと述べた。
クラーナは昨年6月、ソフトバンクグループのソフトバンク・ビジョン・ファンド2などから6億3,900万ドルを調達し、企業価値は約460億ドルと、未上場のフィンテック企業としては世界有数の規模となった。