ポーランドとウクライナで開かれる今年のサッカー欧州選手権大会を前に、ドイツサッカー連盟(DFB)が頭を悩ませている。ポーランドは第2次世界大戦中にナチス・ドイツの占領下で多くの人が犠牲になっており、政治家の不用意な発言など、事あるごとに問題にされる傾向にある。そんななかで3月初めにドイツユダヤ中央委員会のグラウマン委員長が、「ドイツ代表チームは会期中にユダヤ人虐殺の追悼の地であるアウシュビッツかキエフ郊外のバビ・ヤールを訪問すべき」と発言。これを機に、DFBは「どう行動するのが正しいのか」を考えなければならなくなった。
\ただ、試合の合間にアウシュビッツを訪問すると、精神的ショックから次の試合で実力が発揮できなくなる恐れもある。かといって、アウシュビッツの近くをバスで走りながら見学しに行かなければ「(ドイツ人としての)責任逃れ」の行為と誤解されるかもしれない。
\困ったDFBはいくつかの案を練りだした。まずは強制収容所を生き延びた作家に代表選手に経験を語ってもらうというもの。しかし、トレーニングの合間に語り部を招くというのも場違いの感がある。
\2つめは、ドイツ代表チームが予選2試合を戦うウクライナのリヴォフでDFGの文化基金が朗読会を主催するというものだ。これはドイツの文学関係者にとっては興味あるところだろう。
\3つめは、代表選手ではなくてDFGの代表団がアウシュビッツを訪れるというもので、これは実行に移されることが決まった。ニアスバッハ理事長のほかの参加者は未定だが、「皇帝」と呼ばれた往年の名選手、フランツ・ベッケンバウアー氏などの名が挙がっている。
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