2011/11/9

コーヒーブレイク

ティモシェンコの愛国心~ウクライナ

この記事の要約

ウクライナのティモシェンコ前首相(50)が、牢獄の中から愛国の叫びをあげている。同前首相の有罪判決を政治的意図に基づくものと判断し、ウクライナとの関係強化を見直す姿勢の欧州連合(EU)に対して2日、公開書簡を送付。「ウク […]

ウクライナのティモシェンコ前首相(50)が、牢獄の中から愛国の叫びをあげている。同前首相の有罪判決を政治的意図に基づくものと判断し、ウクライナとの関係強化を見直す姿勢の欧州連合(EU)に対して2日、公開書簡を送付。「ウクライナの自由と独立は、連合協定と自由貿易協定の締結にかかっている」として、自らの有罪判決に関係なく交渉を進めるよう請願した。

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ティモシェンコ前首相は2004年の「オレンジ革命」の立役者の一人。ウクライナの欧州への帰属を支持することで知られる。ウクライナのEU準加盟国化を意味する両協定の締結に対する思い入れが強いのもこのためだ。

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一方、ヤヌコビッチ大統領は鉱工業の中心地である東部ドネツクを支持基盤とし、政治的にはもともと親露派といわれていた。就任後は、欧州とロシアの双方と一定の距離を置くことで、交渉においてウクライナの利益を引き出そうという姿勢がみられる。ただ、強権政治で知られたクチマ元大統領の正当な後継者である以上、EUの求めるような民主主義の導入は都合が悪いのかもしれない。とすれば、ウクライナがEUの準加盟国となる両協定の締結が遅れても、駆け引きの期間が延びるだけで痛手は小さいとも考えられる。

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ティモシェンコ前首相は、昨年の大統領選に出馬したが決選投票で敗れた。前首相に対する裁判は、来年の議会選挙をにらみ、ヤヌコビッチ大統領が政敵を排除するために起こしたとみられている。

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キエフの地区裁判所は先月11日、前首相が2009年にロシアと合意したロシア産天然ガス輸入合意が職権乱用に当たるとして、禁固7年と15億フリブナ(1億8,730万米ドル)の罰金支払いを命じた。EUはこの裁判をめぐる司法の在り方を強く批判し、協定締結に向けた協議を凍結させている。

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ヤヌコビッチ大統領は判決直後、欧米諸国の非難を受けて司法改革法案の議会成立を待ってティモシェンコ前首相を釈放する意向を示した。新法が適用されれば、前首相の罪状が軽犯罪に該当すると理由づけていた。しかし、後になって、改革の実行には時間がかかるとして、近い将来の釈放は難しいと態度を硬化させた。議会での法案審議でも大統領率いる与党・地域党は反対の立場だ。

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前首相は罪状を否認し、上訴している。

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