ハンガリーの成人の19%が国外への移住を考えていることが、調査会社TARKIによる5月の調査で明らかになった。2年前の13%に比べて6ポイントも上昇している。2008年以来の不景気で将来の見通しが暗いことや、欧州連合(EU)の旧加盟国で熟練労働力が不足していることなどが背景にあるようだ。
\ハンガリーの「移住希望者」は20年前の体制転換以来、一貫して増え続けている。1993年にはわずか6%だったが、外国語能力の向上や、すでに移住した家族や友人を持つ人が増えたことで、敷居が低くなったもようだ。
\行き先としてはこれまで、労働市場の規制が緩く、入国手続きが比較的容易な英国とアイルランドが人気だった。しかし今後は、昨年5月に障壁を撤廃したドイツへの移住が増える気配だ。
\ドイツ当局によると昨年5月以来、毎月平均して1,400人のハンガリー人が移住している。ハンガリー中央統計局(KSH)でも2030年までに少なくとも16万人がドイツへ移住するとみる。
\ドイツの賃金水準はハンガリーの1.5倍。旅行・ホテル産業や機械製造、建設業など、熟練労働者が不足している業界では4~5倍にも上る。。
\ドイツに限らず西欧諸国の多くで熟練労働力が不足している。IT専門家、エンジニア、医療従事者はどこでも歓迎されている。ハンガリーの看護士は他国でも評判が高く、移住の可能性も大きい。
\国外移住が進行すれば、ハンガリー社会への影響は甚大だ。30歳以下では移住希望率が48%にも上り、高齢化の進行に拍車がかかるのは必至。また、経済好転のカギを握る産業で専門家不足が生じる可能性が高い。
\政府は人口減を防ぐため、第1次世界大戦後に隣国へ割譲された地域のハンガリー系住民の入国手続きを簡易化した。また、政府の支援で高等教育を受ける学生には入学時に在学期間の2倍以上、ハンガリーで働くことを義務付けた。
\果たして、その効果が現れるのか、それとも人口流出が続くのか、その答えは後になってからでないとわからない。
\