中・東欧、CIS諸国、ロシアに特化した情報誌

2011/2/23

総合・マクロ

中東欧諸国でフラットタックスの採用広まる

この記事の要約

中東欧諸国で一律税率(フラットタックス)の採用が盛んだ。2004年以降に欧州連合(EU)に加盟した12カ国(新規加盟12カ国)のうちすでに8カ国が導入した。旧ソ連圏諸国で個人所得税の経験が乏しいこと、また闇経済の規模が大 […]

中東欧諸国で一律税率(フラットタックス)の採用が盛んだ。2004年以降に欧州連合(EU)に加盟した12カ国(新規加盟12カ国)のうちすでに8カ国が導入した。旧ソ連圏諸国で個人所得税の経験が乏しいこと、また闇経済の規模が大きいことが動機となっているもようだ。

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具体的には、基礎控除額を引き上げ、例外条項を最低限度にとどめる措置と組み合わせて採用されている。個人・法人ともに納税モラルが向上し、外国企業による投資を促進する効果があるとされる。

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ハンガリーでは年初に所得税とキャピタルゲイン税で16%のフラットタックスを導入した。マトルチ経済相はその目的として◇国の競争力強化◇闇経済の規模縮小◇失業率引き下げ――を挙げている。旧税率は所得税が17~32%、キャピタルゲイン税が20%だったため、納税者の大半が減税となった。納税申告書も36ページから12ページに減り、記入の手間が軽減された。

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フラットタックス採用の先駆けとなったのはバルト3国だ。1994年に導入し、現在の税率は18~25%となっている。2004年にはスロバキア、05年にはルーマニア、2008年にはチェコが採用した。スロバキアでは所得税、法人税、付加価値税(VAT)で課税率を一律19%に定め、同時に優遇税制や例外条項を廃止した。

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国際納税者連盟(WTA)のタラスワーバーグ事務総長は、フラットタックス制度の長所として、◇わかりやすい◇経済成長に貢献◇税制をめぐる国際競争の活発化◇物価上昇による実質増税の回避――を挙げる。フラットタックスを採用した中東欧諸国の競争力が向上し、長期的には西欧諸国でも導入を巡る議論が盛んになるとみる。

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ただ、累進課税の伝統が強い西欧諸国ではフラットタックスの議論がタブー視されている現状がある。加えて、多くの国では金融危機による国家債務増加で課税強化が検討されており、近い将来に実現することはなさそうだ。

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